三階建ての家は狭小地でも快適に暮らせる!デメリットや注意点も紹介

注文住宅を建てるにあたり、敷地面積が限られているために、三階建ての家を検討しておられる方も多いのではないでしょうか。

都心部では、地代が建設費よりも高くなるケースもあり、狭小地の有効な土地利用が求められています。しかし、三階建て住宅は、工事費や維持費が割高になり、生活導線が複雑になるなど、デメリットが多いと言われます。

この記事では、三階建ての家のメリットだけでなく、デメリットや注意点を紹介します。

理想的な住まいを造るために、参考としていただければ幸いです。

三階建ての家のメリット

全国でも、東京・神奈川・大阪などの都心部では、住居用の敷地が少ないため、狭小地の戸建住宅が三階建てになるケースが増えてきています。

まず、三階建ての家にはどのようなメリットがあるのかについてみてみましょう。

都心部の狭小地における床面積のメリット

住宅は、建設の際に、その地域の建築規制(建ぺい率や容積率などの建築基準)に基づいて建てなければなりません。

例えば、建ぺい率が60%の地域では、20坪(66㎡)の土地で、二階建てなら23坪(79㎡)になりますが、三階建てにすると35坪(118㎡)の床面積が確保できます。

三階建ての家の1番のメリットは、狭小地でも住居に必要な面積を十分に確保できることです。

首都圏の駅近で便利なところは地価が高くなるため、三階建ての選択肢が生まれます。

狭小地でコンパクトに住みながら、通勤や通学の時間を減らし、時間を有効利用できます。

ガレージ・店舗・二世帯住宅のメリット

3階建ての家では、ライフスタイルに応じて、限られた土地を有効利用することが可能になります。例えば、一階にビルトインガレージを組み込むことで、都心部で高い駐車料金を毎月払わなくても車が所持でき、車の維持費の軽減になります。

約10坪で普通車が2台駐車できるため、一階部分の設計に取り入れるメリットは大きいでしょう。

商業地域では一階を店舗・事務所とすることで通勤時間を削減し、併用住宅として、職場と住居の距離をなくしたコンパクトなライフスタイルが実現できます。

その他、各階が独立した三階建てにすることで、親世帯と子世帯の生活空間を分けた二世帯住宅にする事も可能です。それぞれのプライバシーを確保できます。

将来的には他人に貸して、賃貸経営で利益を上げることも可能です。

三階からの眺望の魅力

基礎部分の構造にもよりますが、三階建ての家は、高さ10mの「日影規制」があるため、屋根までの高さが9mほどになります。

一般に、二階建てでは高さ3~4m、三階建ては、地上7~8mとなるため、高い位置からの眺望が期待できます。

また、陸屋根で屋上をルーフバルコニーにすれば、夜景や花火が楽しめ、ライフスタイルに合わせた住居環境の拡充が可能です。

ちなみに、「日影規制」とは、地方条例で定めた建築基準法の高さ制限で、周辺の敷地に影をおとす時間を一定内に抑えることで、近隣住民の日照権を守るための規制です。

眺望に関しては、立地条件に大きく左右されるため、地域の条例や周辺の建物の建設状況を見ながら、見晴らしの良い窓の位置を決めることが大切です。

日当たりと風通しが良い

周辺の環境にもよりますが、一般に、平家より二階建て、二階建てより三階建ての家の方が、日差しを遮るものが少なく、日当たりがよくなります。

また、狭小地の三階建ての家の場合は、部屋数が少なく、居室が外壁に接するため、窓の位置をうまく工夫して風通しの良い構造にすることができます。

一階で道路から家の中が見える場合は、カーテンを締め切った状態となり、昼間でも電気をつけることもあります。

上層階ではプライバシーを確保しながらも、窓を大きく開けて採光を取り入れ、自然の風を取り入れて空調ができるため、電気の使用量を減らすエコな生活ができます。

窓の位置に関しては、周囲の建物の影響を受けるため、プライバシーが守れるように事前に十分な調査が必要です。

二階リビングのメリット

リビングを二階にすると、買い物の荷物を持って上がる苦労がありますが、眺望や風通しの面では、大きなメリットがあります。

街中の家の道路に隣接した一階リビングは、周囲を高い建物に囲まれて、どうしても暗い閉ざされた居室になりがちです。

リビングは1日の中でも最も長く時間を過ごす場所ですので、採光を取り入れた明るいリビングにしたいものです。

二階リビングは一階リビングに比べて、外から覗き見られることも少なく、冬場には十分な採光を取り入れることで、暖かで居心地の良い空間にすることができます。

三階建ての家の間取りからくるメリット

狭小地の三階建ての家では、一階がガレージ・バス・トイレ、二階がリビング・キッチン、三階が寝室という間取りの家が多くなっています。

二階が家族が団欒する共有スペースとなり、三階は個々の生活スペースとして分けることができます。

三階建ての家では、それぞれの階に機能を持たせて、階を移動することで環境を変えることができ、生活にメリハリを持たせることができます。

一階部分が事務所や店舗の場合も、同じ建物の中で全く違った空間を作ることで、階の移動だけで短時間に気持ちを切り替えて、1日の時間を効率的にやりくりすることができます。

自然災害の被災リスクが軽減される

近年、台風による豪雨で河川が氾濫する災害が多発しており、水害に備えた家にしたいというニーズが高まっています。

河川の氾濫では、一階より二階、二階より三階の方が安全確保できます。

また、災害時のニュースでは、上層階のベランダや、屋上から救助を待つ人々の姿が見られます。

床上浸水の被害の場合も、二階リビングならば、電化製品などの水濡れの被害を減らすことができます。

三階建ての家のデメリット

三階建ての家は、実際に住んでみて、不便で後悔する人もいるようです。

三階建ての家のデメリットは建てる前にを知っておいた方が良いでしょう。ここでは、代表的なデメリットを紹介します。事前にどのような対策が立てれるかが重要です。

家の中の温度差が大きくなる

家は一般に暖気は上へ、冷気は下へ対流するため、三階建ての家では冬は一階が寒く、夏は三階が暑い家になりやすい傾向があります。

オープンな階段にした場合には、空気の対流により冷暖房効率が悪くなり、光熱費がより高くなってしまいます。

建物の断熱性と気密性を高める構造にして、一階から三階までの冷暖房や換気に、十分配慮する必要があります。

マンションではワンフロアに全ての居室があるため、リビングに大型エアコンを設置するとで、冷暖房が家全体に行き渡りますが、三階建ての家は各階にエアコンの設置が必要です。

木造三階建ての場合はマンションよりも気密性が低いため、冷暖房効率が悪く、同じ空調機をつけても管理できる床面積は狭くなります。

マンションでは角部屋の方が、真ん中の家よりも光熱費が高くなるように、三階建ての家は外壁に接する面積が広いため、外気の影響を受けやすくなります。

エアコンの取り付け費や家具の搬入に費用がかかる

3階建ての家で、3階にエアコンの室外機を取り付ける際に、ベランダなどのスペースがない場合は、取り付け費用が高額になることがあります。

室外機を一階に設置して配管を伸ばしたり、二階の屋根に載せたり、また、三階の壁面に取り付ける必要があるためです。

これらの工事は、「標準取り付け」ではなく追加料金が発生するため、事前に業者に工事費を聞いておく必要があります。(通常は業者が教えてくれます)

三階の部屋は屋根の熱が伝わりやすく、夏場に熱帯夜で眠れなくなることもあり、空調機の設置は必須です。

また、二階に冷蔵庫などの電化製品や大型家具、ピアノなどの調度品を運び込む際に、階段が利用できず、外から吊り上げて窓から入れる費用が発生します。

家具の購入に際しては、階段幅や踊り場などの可動域を考慮する必要があり、組み立て式家具の購入がおすすめです。

屋根の傾斜「母屋下り」と建築デザイン

都心部の高さの制限の厳しい「第1種高度地区」では、「母屋下り(もやさがり)」と呼ばれる北側斜線制限で、三階部分の屋根が急勾配になることがあります。

「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」の二階建ての家にも見られるもので、北側天井に傾斜ができ、使い勝手の悪い部屋になります。

高さ制限で屋根が急勾配になる勾配天井(母屋下り)をなくすには、各階の部屋の高さを低くして、通常2.4mのところを2.1m~2.3mに設計します。

注文住宅では、設計依頼時の図面で「母屋下り(もやさがり)」が分かりにくいため、三階部分の天井の構造に関しては特に注意が必要です。

「母屋下がり」の場合は、家具を選ぶ時も、壁の高さに合わせたものを購入する必要があります。

また、三階建ての家は、一般的に耐震構造を高めるためシンプルな形状となりやすく、安全を確保するゆえ単調で画一的なデザインになりがちです。

デザインにこだわりだい場合は、「母屋下り(もやさがり)」を含め業者に確認しておくと良いでしょう。

階段の上り下りの負担と老後の不安

三階建ての家で一階にバス・トイレなどの水回り、二階がリビング・キッチン、三階が寝室という間取りにすると、便利なようですが、各階を行き来する労力が発生します。

階段の上り下りは若い時は苦になりませんが、歳をとると足腰に負担がかかり、老後の生活では不安があります。

水回りを考慮し、家事動線を二階に置きながらも、三階にもトイレをつけるなどの工夫が必要です。

老後を見据えて、将来的にホームエレベーターが設置できるよう、設計段階で準備しておくことをおすすめします。

家事動線が複雑になりやすい

三階建ての家では、例えば、一階で洗濯して二階のベランダで干し、三階のクローゼットにしまうなどの場合、階段を使った動きが家事労働の負担になります。

ビールや米などの重たい食料品も、買い物から帰って、二階キッチンに持って上がらなければなりません。

部屋に独立性を持たせるために廊下をつけると、廊下に無駄なスペースを取られ、居住面積が減らされてしまいます。

階建ての家の場合は、できるだけ間仕切りを少なくし、シンプルな間取りにして家事動線の効率化を図ることが大切です。

採光計画が難しい

三階建ての家では、二階の窓の高さ3~4m、三階では地上7~8mからの眺めが期待できますが、都心部では周辺の建物も高いことが多いです。

周囲を建物で囲まれている場合は、プライバシーを確保しながら窓から採光をとりいれるのが難しくなり、三階建てのメリットを十分に生かすことができません。

京町家のように、通り庭や坪庭などを作ることで、都心の密集地でもより多くの太陽光や自然の風を取り入れることができます。

道路に面した部屋の窓には、目隠し用の格子をつけるなどでプライバシーを確保し、太陽光や風を室内に取り込む工夫が必要です。

台風や地震などの災害時に破損の点検ができない

災害時では、破損箇所を確認して応急措置を取らなければ、外壁の亀裂や建材の剥離部分から雨水が侵入し、住宅の寿命を一気に縮めることになってしまいます。

三階建ての家の場合、高所の壁や窓、屋根の点検が素人では簡単にできないデメリットがあります。

近年は、大型台風が上陸する件数が増えており、また、沖縄や九州だけでなく、関東エリアでも強風による甚大な被害が出ています。

台風の前後の屋根に登っての作業は、非常に危険で専門業者に頼むことになりますが、緊急時にはなかなか依頼できる業者を見つけることも難しいのが現状です。

定期的な外壁塗装の際に、屋根や高所の破損・劣化状況を確認し、修理しておくことが大切です。

構造計算などの費用が必要

構造計算とは、建築・土木構造物が、固定荷重・積載荷重、風圧・積雪・地震に対してどのように変形し、構造体にどのような力がかかるかを計算することです。

建造物が、そのような変形や応力に耐えられるかを判定し、建物の安全性を確認するために行われます。

構造計算書の提出は、二階建て住宅の建築申請では必要ありませんが、三階建ての家を建てる場合は必須です。構造計算書は、複雑な数式や図が載せられた、A4で100〜5000枚程の膨大な資料となり、構造計算や適合性判定業務に費用が発生します。

また、建物の高さが高くなることで、重心が高くなり地震の揺れの影響も大きくなるため、「耐震壁」をより多く設置する必要があります。

三階建ての住宅の場合、上からの重量が一階部分に多くかかるので、地盤や建物の構造をより強固にする必要があります。

木造建築でも、揺れの振動を吸収しやすいラーメン構造の「SE構法」を採用したり、一階をビルトインガレージにしたりして、耐震性を高めることができます。

地盤改良費が高額になる場合もある

木造住宅を新築する際には、地盤調査が義務付けられていますが、三階建て住宅の場合も、構造計算書の作成で地盤調査をしていしなければなりません。

一般に、「スウェーデン式サウンディング試験」が行われますが、三階建て住宅の場合「ボーリング標準貫入試験」が必要な場合があり、費用は割高になります。

地盤調査の結果、多額の地盤改良費がかかることもあり、三階建ての家を建てる場合は、事前に調査してから建築計画を進める必要があります。

地域の規制や建築基準法による制限を受けやすい

三階建ての家の方が、二階建て住宅より厳しい建築基準法や、条例規制を受けやすいと言えます。

各自治体は、「建ぺい率」「容積率」の他に、「道路斜線」「北側斜線」「防火制限」などの建築規制を定めています。

自治体によって「高度地区」や「日影規制対象区域」などの指定があり、三階部分を後退させることが必要になることもあります。

建築基準法の改訂で、2020年4月から、三階以下で延べ200㎡以下の建築物は、幅0.9メートル以上の敷地内通路を設けることとされています。

また、高さ31m以下の三階以上の部分には、消防活動のための非常用進入口の設置が必要です。

法令は自治体によって異なり、建築基準法の改訂もたびたび行われていますので、緩和措置も含めて、現在の規制を調べてから設計に取り掛かることが重要です。

まとめ

三階建て住宅では、一階をビルトインガレージや店舗・事務所にしたり、二世帯住宅にしたりすることで、多様なライフスタイルに対応できます。

窓を大きくして自然光を取り入れ、プライバシーを確保しながら風通しの良い部屋を作り、また、二階建ての家よりもより良い眺望を楽しむことができます。

しかし、三階建ての家は生活導線が複雑になり、階段の上り下りでは、老後の生活の不便さが気になります。デメリットがありますが、都心の便利なところに、狭小地でもコンパクトに住みたいと思う人が多く、今後も三階建ての家は増えてゆくと考えられます。

三階建ての家は建築技術の進歩や建材・設備の向上、普及などが期待されています。

実際に三階建ての家を建てることを考えている方はデメリットを知り、プロに相談しながら理想の三階建ての家を実現してください。