二世帯住宅のデメリットや注意点とは?「完全分離型」二世帯住宅は理想的!

近年、核家族化が進み、結婚した夫婦が親と一緒に住む「同居」ということは、少なくなってきましたね。

しかし、共働きの夫婦が増え、働きたくても託児所に子供が預けられない状況下で、子育てに親の力を借りることも増えてきました。

また、高齢化と痴呆症の問題で、年老いた親を介護施設に入れることができず、自宅で介護するケースも多くなってきています。そこで、見直されているのが二世帯住宅のあり方です。

ここでは、二世帯住宅の良さや問題点を知り、後悔しない二世帯住宅を建てるにはどうすれば良いか、いくつかの注意点について紹介します。

二世帯住宅のメリットとは

まず、二世帯住宅では、親世帯・子世帯のそれぞれに、どのような経済的・精神的メリットがあるかみてみましょう。

経済的メリット:建設費用負担の軽減

戸建て住宅を建てるには、地代と建築費で数千万円の費用がかかり、若い世代にとってはローンの負担も大きくなります。

二世帯住宅は、面積も広くなるので建築費もかかりますが、個別に2軒の家を建てるよりは安くなり、ローンも親子で分担して組むことができます。

若い夫婦にとっても、無理のない月々のローンでマイホームが実現でき、建築費を抑えた分、設備や内装に費用をかけることができます。

経済的メリット:相続税が節税できる

二世帯住宅では、「小規模宅地等の特例」を適用することで、相続する土地の価格を低く評価し、納税額を抑えることができます。

他界した親名義の家を、同居する子供が相続し、相続税の納税期日まで引き続き住んでいれば、この特例を受けることができます。

「小規模宅地等の特例」は、一定の面積まで、住宅用の土地の評価額を、最大80%減額できるという法律です。

経済的メリット:不動産取得税の減税

中古住宅を購入して、二世帯住宅にリフォ―ムする場合、「不動産取得税」の控除が受けられます。

一般に、不動産取得税では、床面積50㎡以上240㎡以下の住居は、1,200万円の控除が受けられるとされています。(2020年5月現在)

二世帯住宅なら、倍の2,400万円の控除が受けられる可能性があります。同居のために改築することを前提で中古物件を購入する際は、控除額が大きくなります。

経済的メリット:固定資産税の減税

固定資産税でも、二世帯住宅の場合、400㎡までなら「小規模住宅用地」とみなされ、土地評価額が低く見積もられます。

通常は、200㎡までが「小規模住宅用地」として、評価額の1/6、200㎡以上は「一般住宅用地」として1/3で、課税標準額が計算されます。

なお、税金の軽減措置は自治体により異なりますので、確認が必要です。

経済的メリット:光熱費が削減できる

一般に、二世帯住宅の方が、別々に暮らすよりも、エネルギーの消費を効率化し、全体の光熱費を安くできます。

リビングやキッチンが別でも、玄関や浴室を共用したり、メインのキッチンでまとめて調理したりすると、エネルギー効率が良くなります。

また、近年は電気料金の様々なプランがあるため、二世帯住宅で、メーターを分けて設置することも可能です。

その場合、それぞれの電気使用量と基本料金を考え、電気代が最も安くなるようなプランに加入することをおすすめします。

親世代の精神的なメリット:安心感と充実感

高齢になると、家に誰か頼れる人がいるということは、もしもの時を考えると大きな安心感につながります。

戸締りや火の後始末など、外出後に気になることを連絡して、確認してもらうこともできます。

また、子供や孫との触れ合いで、日々の生活に充実感を持つことができ、若い世代とコミュニケーションをとることで、気持ちも若返ります。

子世代の精神的なメリット:子育てのサポート

託児所が不足している近年、親に子供を見てもらえることは、仕事をしている人にとっては大きなメリットです。

残業で子供を迎えに行けない、熱が出て保育園に預けられない、などの緊急事態に、子供の世話を親に頼むことができます。

仕事で帰りが遅い時に食事の用意をしてもらうなど、家事や子育ての祖父母のサポートは、働く人にとって大きな安心感となります。

家事の分担や介護におけるメリット

買物・料理・洗濯・掃除などの家事を、子供世代と親世代で分担できます。親世代はできる範囲で家事・育児を引き受け、子世代は精神的にも経済的にもそのメリットを受けることができます。

親が歳をとったとき、養老施設の不足、痴呆症の問題も含め、親の介護や食事面で、よりスムーズに子世代が親世代をサポートできるメリットがあります。

二世帯住宅に住む前に知っておきたいデメリット

二世帯住宅には、実際に暮らしてみなければ気づかない、多くのデメリットも潜在しています。

事前に、デメリットについても充分認識しておきましょう。

建設費用が高くなる

完全同居型の二世帯住宅でも、部屋数が増えるため、建設費用は一般に、一世帯住宅の約1.2倍となっています。

キッチンやトイレなどを分ける場合は、さらに設備費用がかかり、世帯の生活空間を分離すればするほど、建設費は高くなります。

建設費が高くなれば、住宅ローンの月々の返済額も増えるため、充分な資金計画が必要となってきます。

間取りの制限を受ける

二世帯住宅では、親がいずれは高齢になることを考え、一階を親世代にすることが多く、子世代は、2階の住居の間取りで制限を受けることになります。

子供が走り回る音が階下に響くこともあり、リビングの位置を考えるなどの、間取りへの配慮や、床の防音対策も必要です。

バス・トイレなども、高齢者の生活の障害にならないような住宅設計が求められます。

生活習慣や価値観の違いからくるストレス

表面的に円満に見えても、同居には精神的なストレスがつきまとい、嫁・姑の争いに発展することも多くあります。

共有空間による家事の仕方の違い、起床・就寝時間のズレ、食事や入浴、家事の分担や、食費・電気代をめぐる問題が起きやすくなります。

生活習慣や価値観の違いが積み重なり、ギクシャクとした関係になりやすいと言えます。

プレイバシーの確保が難しく生活に不便が出やすい

二世帯住宅で別建物にしても、玄関を共有にすると、宅急便や郵便物などの受け取りで、プライバシーが守れないことがあります。

家の作り次第では、子世代が、家に気楽に友人を呼びにくくなるケースや、親世代が、来客中にリビングに行けずに部屋にこもらなければならない状況もうまれます。

キッチンを共有する場合、子世代は好きな時に食べられないことや、キッチンを分けても、狭くて使い勝手が悪いということもあります。

売却が難しい

二世帯住宅は、間取りが一般的ではないため需要が少なく、売却しにくいというデメリットがあります。

また、完全分離型の二世帯住宅でも、同じ敷地に建っている場合は、片方だけを売却するのは難しくなります。

相続財産となる場合は、兄弟間で売却の合意に時間がかかり、相続税を払うために売り急いだりすれば、安値で決着してしまうことにもなりかねません。

相続トラブルに陥りやすい

二世帯住宅に同居する子世帯とは別に、兄弟姉妹がいる場合は、兄弟間で相続トラブルが発生することがあります。

特に、親の遺産が「二世帯住宅」しかなく、他の財産と合わせて分配できない場合は、同居していない兄弟姉妹に不公平感がうまれます。

二世帯住宅を建てる段階で、兄弟間で事前に、相続の話をしておくのがおすすめです。

二世帯住宅を建てる際の注意点

二世帯住宅を建てる際には、プライバシーの確保や相続で問題が起きないよう、事前に対策をしておくことが必要です。

どのような間取りで建てるかもしっかりと計画し、二世帯がストレスなく暮らせる環境を作ることが大切です。

しかし、二世帯住宅は、親の土地に注文住宅で建てることが多く、土地代を建築費にまわせるので、こだわりの家を建てることもできます。

二世帯住宅で後悔しないためにも、建てる前に住宅タイプを決める

後悔しない二世帯住宅」を建てるには、事前に、どのような家を建てるかを、しっかりと計画しましょう。

二世帯住宅にも様々なタイプがあり、「完全同居型」「部分共有型」「完全分離型」があります。

完全同居型

「完全同居型」では、一軒の家で、キッチンやバス・トイレなどを全て共有するため、プライバシーの確保は難しいです。また、光熱費や食費はトータルで安くなりますが、世帯別に把握しづらく、金銭面でトラブルが起きやすいと言えます。

部分共有型

「部分共有型」は、玄関は同じで、住居を階層で分けて、1階は親世帯、2階は子世帯とし、キッチンやバス・トイレを別々に設けるタイプです。

キッチンやバス・トイレを2つ作るため、建築費はかかりますが、ある程度のプライバシーを保ちながら、距離の近さを生かした生活ができます。

完全分離型

さらに、玄関も分けた住宅設計にする場合は、「完全分離型」と呼ばれます。

「完全分離型」の二世帯住宅は理想的

「完全分離型」の二世帯住宅では、建築費はかかりますが、完全に独立した生活空間が確保できます。

光熱費も別で、同居のデメリットである「プライバシーの確保」や「間取りの制限」といった問題がありません。一方、距離は近いため、子育てや介護の面で、緊急事態にすぐに対応できる便利さがあります。

また、独立空間であるため、将来的には賃貸物件として貸し出して、収益を得ることも可能です。

まとめ

二世帯住宅とは、祖父母と父母、子どもがひとつ屋根の下に暮らす家です。

今までは親との同居は考えられないという時代でしたが、最近は、高齢化社会・共働き世代を迎え、現実味のある選択肢となってきています。二世帯住宅にすると経済面で大きなメリットがある反面、精神的なストレスが増えるというデメリットもあります。

親に土地のある場合は、「部分共有型」「完全分離型」の二世帯住宅の建設を考えてみるのもおすすめです。ただし、相続の時に兄弟姉妹間で不公平感が出ないよう、事前に遺産分割について考えておくことも大切です。

人生を豊かにしてくれる住居作りのために、近年ハウスメーカーから売り出されている様々な二世帯住宅のプランを、是非とも検討してみてください。