近年は、津波や河川の反乱などの自然災害が多く、住居をどこに構えようか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。海岸沿いや川沿いの家は、水辺で暮らすおしゃれな暮らしに思われますが、高台に住んだ方が安全なのではないかと考える人も増えてきています。
実際に、高台や坂の上に住むには、どんなデメリットやメリットがあるのでしょうか。
この記事では、暮らしの安全や生活の便利さの面から、高台にある家で暮らすメリットとデメリットを紹介します。
高台の家に住むデメリット
高台の家に住むには、日常の生活面での不便さは否めません。
具体的にどのような問題があるのか、まず初めに、デメリットについて見てみましょう。
高台の家に住んだら坂道が大変
高台の家に住むデメリットで一番大きなものは、やはり「坂道」を登る大変さです。
バスが通っていても、バスを降りてから自宅まで、また、坂を歩いて登らなければならない家もあります。
買い物や通勤・通学で、帰宅時に坂道を歩いて登るのには、とても労力を要します。
外出時に行きは駅まで、坂道を歩いて降りときも、坂の途中でガスの火の消し忘れや戸締りが気になって、引き返そうか悩むこともあります。
携帯や財布を忘れたことに気がつき、また登って家に戻ることもありますが、時間のロスが大きく、仕事や待ち合わせに遅刻することもあります。車やバイクがあれば問題ありません。雪が積もる地域では、平地よりも滑りやすくなるので車でも注意が必要です。
高台の家で暮らす生活の不便さ
病院や役所などの施設が周辺になく、用事で郵便局や銀行に行くのに、まず山を降りなければなりません。自宅が最寄りの電車の駅から遠く、バスが走っていても、高台の坂の一番上まで通っていることは少ないです。
住宅地の路線バスは昼間の本数が少なく、終バスの時間も早いため、通勤・通学に不便です。
子育て世代では、買い物の帰りにバスを降りて、子供の手を引きながら、荷物を持って坂道を登るのは大変です。
特に、飲料水やお米などを持って坂道を登ることは、アスリート並の運動量です。
高台の暮らしは買い物が大変
高台の分譲地では、コンビニやクリーニング店があることもありますが、品揃えが悪かったり、新鮮でなかったり、値段が高かったりします。
店の件数が少ないため、商品を比べて買い物をすることができず、多少値段が高くても、サービスが悪くても甘んじるしかありません。商店街や大型商業施設のような、価格競争がないため、生活必需品を買うにも、家計費が多くかかります。
「ニュータウン」のような造成宅地で人口が減少すると、スーパーが撤退することもあり、不便な土地で将来的に売りにくくなることもあります。
高台の家では移動が大変
高台の道は注意が必要です。子育て世代では、ベビーカーの使用が危なく、また、子供が自転車に乗ることにもかなりの危険が伴います。
平地ならば自転車通学ができても、急な坂道の上の家庭では、親は心配で子供に自転車を買うことさえもためらいます。
通勤・通学に自転車が乗れそうな、比較的緩やかな坂であったとしても、高台では帰りの登りを思えば電動自転車が有効です。
都市部の高台に家を建てる場合、車で子供の習い事や塾の送り迎えをする必要があります。そのためガソリン代や車の維持費の費用が発生します。
車がない場合、タクシーを利用すると交通費がかかります。
家族がマイカーに依存した生活になりがち
高台では、バス停や電車の駅などへのアクセスが悪く、買い物に不便なところが多いです。そんな地域で、一度、車に依存した生活をしてしまうと、車がなければ生活できない状況に陥ってしまいます。
大型スーパーでの買い物はもちろんのこと、子供の塾の送り迎えや、親の病院への送迎は、車を運転する人への大きな精神的負担になります。
車に依存した生活をしているうちに、駐車違反や一旦停止違反などが重なり免停になると、生活のリズムが一挙に崩れてしまいます。
高齢になると生活が不便
若いうちはそれほど苦にならなくても、歳をとり足腰が弱くなると、高台の坂の上の生活は何かと不便です。若いうちは行動力があり、車の運転も苦になりませんが、歳をとり車の運転が不安になると、生活の足が奪われてしまいます。
特に、坂道の運転は道もせまく通常の道にくらべて注意が必要です。
体調が悪くなった時に病院に通うのにも、人に会いに行くのも、タクシーを呼ばなければなりません。
高台からの下山ルートが限定される
多くの高台では下山ルートが限られており、横への幹線道路が少ないため、どこに行くのでも、一度山を降りなければなりません。
車は狭い橋が利用できないため、最短距離が選べず、遠回りしなければならないことが多いです。また、朝晩の通勤・通学時には、道路が混んで停滞し、横道からの出会い頭の事故が多くなります。
災害時には、下山するルートがふさがれることもあり、山沿いに避難するルートも確保しておく必要があります。
冬場の路面凍結に注意
高台での暮らしは、冬場に雪や霜で路面が凍結し、車の事故や歩行者の転倒が起きやすくなります。
都市部でも雪の降る地域では、車にスタッドレス・タイヤやチェーンをつける必要があります。
近年は地球温暖化で、雪の降ることも少なくなってきましたが、雪国以外でも異常気象で季節外れの雪が降ったり、年に数回は路面が凍結して危険な状態になります。
そういう日に限って、子供の入学試験だったりと、大変な思いをすることもあります。
ライフラインの不安や自然災害のリスク
高台では、渇水時に水圧制限が実施されるところや、水道やシャワーの水圧が低くなることがあります。
また、電気で水を高台に上げている場合は、水道の基本料金が高く設定されている地域もあり、住む前に水道料金や水圧についてもチェックが必要です。
高台の宅地造成では、山を削って作られたものと、谷を埋めて作られたものがあり、山の斜面の高台では、土砂崩れへの注意が必要です。山間部の谷を埋めて作った低地では、地盤がゆるくて災害に弱く、大雨の時には鉄砲水や液状化などの被害がでます。
高台の家を買う場合は、役所で災害時にどのような警報が出ているか、ハザードマップを確認することが必要です。
高台の家に住むメリット
高台で、坂の上で暮らすにはそれなりの苦労がありますが、メリットもたくさんあります。
高台にある家は、日当たりや眺望が良く、2011年の東日本大震災では、津波の被害を免れました。
自然災害の多い近年、高台に家を買おうと考える人も増えてきています。
眺望を楽しみながら優雅に暮らせる
高台の家は下界の街を見渡せ、昼間の見晴らしはもちろん夜景も美しく、眺望が良いのが大きなメリットです。
海沿いの高台では、眼下に青い海が見え、住む人の心に癒しと開放感を与えてくれます。
視界を遮るものも少なく、大きな窓やバルコニーをつけることで、高台からの眺めを生活に一部に取り込むことができます。
高台の分譲地では、開発時に地目を「第一種低層住宅専用地」に指定していることが多く、家を建てた後に隣に高層マンションが建つ不安もありません。
海外リゾート地の高台の高級住宅地では、エリア一帯の建物の高さ制限をして、眺望を遮らないための条例を定めていることもあります。
風通しがよく熱がこもらない
高台の家では平地よりも、風通しがよくて熱がこもりにくく、夏場を涼しく過ごせます。
周囲に高い建物がなければ、窓の開口部を広くして、自然の風を存分に室内に取り入れる設計が魅力です。
近年、都心部の住宅では夏場の「ヒートアイランド現象」が深刻です。これは、コンクリートに日中に蓄熱された温度で、気温が夜になっても下がらず、熱帯夜になる現象です。
高台では、緑に囲まれた住居環境で、都会よりも遥かに涼しく真夏日を過ごすことができます。
車の騒音が少なく自然豊か
高台では、街中や幹線道路沿いの住居のように、騒音に悩まされることもありません。
都心部のように、夜間の緊急車のサイレンや、車の排気ガスに悩まされることもなく、落ち着いた静かな環境で暮らすことができます。
また、子育て世代では子供の通学や遊びで、交通事故の心配が少なく、のびのびと育てることができます。
高台は山に近く緑豊かで、空気がキレイで虫や草花が多く、四季の移ろいを感じることができ、子育てに適した環境です。
一般に、沿岸の工業・商業エリアより、山側の住宅エリアの方が、公立学校の校区が良いと言われています。
地盤が硬く安定している
日本は火山列島で花崗岩の山が多く、高台の造成地は山を削って作られているため、地盤が比較的安定しています。
一方、山のふもとの沿岸地域は、砂が堆積してできた平地で、地盤が脆弱になっています。
1995年の神戸の阪神淡路大震災では、淡路島を震源とする揺れが、六甲山ふもとの脆弱な地質を揺らし、平地の多くの建物を倒壊させました。
六甲山の山麓にある住宅地では、外壁にX状のせん断ひび割れができたものの、多くの建物は倒壊をまぬがれています。
地震による揺れや津波、豪雨による河川の氾濫を考えると、高台の住宅地の方が沿岸の平地よりも安全と言えます。
まとめ
高台にある家に住むには、坂道を上ることに苦痛を感じない、体力と精神力が必要です。また、坂の上で暮らすには、買い物や通勤・通学で、市街地に出るために坂を降りるということが必ず必要になってきます。
買い物や家族の送り迎えで、車に依存した生活になりやすく、ガソリン代や車の維持費、タクシー代やバス代などの交通費もかかります。
しかし、高台の眺望は開放感があり、お盆や正月には空気が澄んで、遥か遠くの海まで見渡すことができ、夜景を眺めれば1日の疲れが癒されます。
高台は緑豊かで、市街地では感じることのできない四季の移ろいがあり、子供をのびのびとした自然環境で育てることができます。
一般に山側には閑静な住宅が多く、公立高校の校区がよく、地震や津波、河川の氾濫などの災害が少ないというメリットがあります。
近年は、ネットで何でも買うことができ、山側ルートでジョギングをしながら、日々を綺麗な空気の中で健康に暮らすことができます。
高台に住むメリット・デメリットは、結局は実際に住んでみなければわからない、人それぞれの満足度の問題なのかもしれません。