木造建築は、古くから寺社仏閣の建設に取り入れられてきた伝統的な建築様式ですが、実は現在も日本の戸建住宅の多くが木造建築で建てられています。木造家屋は、正しくメンテナンスをしてゆけば、何世代にもわたって住み続けることのできる優れた住宅です。
木造住宅の新築を考えている方は、そのメリットやデメリットが気になっている人も、多いのではないでしょうか。
この記事では、木造住宅にはどのようなメリットとデメリットがあるか、日本の木造住宅にはどのような特徴があるのかを紹介します。
一般的な木造住宅のメリット
日本家屋に木造住宅が多いのは、木材が高温多湿の日本の気候に適していることがあり、日本では、木造の建築技術が早くから普及していました。
木造住宅では、基礎となる木材に「ヒノキ」「ケヤキ」「杉」など、内装や家具には「ブナ」「アカマツ」「ミズナラ」などが使われています。
「ヒノキ」は耐水性がありシロアリなどの害虫に強く、また、「ケヤキ」は耐久性に優れている反面、硬いので加工しにくいなどの特性があります。
木材と言っても種類が多いため、それぞれにメリット・デメリットがあり、価格も異なります。
ここでは、一般的な木造住宅のメリットについて紹介します。
木材は調湿効果に優れている
木造住宅は、木の持つ保湿効果や通気性で、季節に合わせて湿度を調節してくれるため、日本の気候に適した住まいと言えます。木は水分を吸収・放出する「調湿効果」を備えており、木材で建てられた日本家屋は、通気性・調湿性に優れた住宅と言えます。
木材は断熱性に優れている
木造住宅に使用されるスギ・ヒノキ・ブナの木材は、コンクリートや鉄に比べて「熱伝導率」が低く、断熱性能に優れています。
特に、「木造枠組壁工法」という工法では、枠組材に取り付ける壁面に、断熱建材を取り入れやすく、断熱性を強化した家を建てることができます。
天井や壁に、石膏ボードやグラスウールなどの断熱材を使用し、住宅の耐火性能を強めています。
気密性がある
木造住宅は冬は寒いというイメージがありますが、「木造枠組壁工法」では、床や壁のパーツをぴったりと組み立て、気密性の高い家を作ることができます。
気密性が高いほど、一度稼働させた空調機の温度調整効果が長持ちするため、光熱費の面でもメリットがあります。
建築費が安い
木材は加工しやすく、現在は木材の供給も安定していて、価格面でも安心できます。
木造住宅の建設では、熟練した職人をかかえる施工会社も多く、鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りの家よりも、施工費が安く仕上がります。
ただし、使用する木材の種類によって坪単価は異なるため、事前にどのような仕上がりにしたいかを、予算と合わせて検討する必要があります。
耐火性に優れている
木材は、燃えやすそうに思われがちですが、木材は一定以上の厚みになると、燃えにくいという特性があります。柱や梁に太い木を使えば、熱伝導率が低く、木の中まで燃えるのに時間がかかるため、火災にあっても構造部分は焼け落ちずに残ることが多いです。
いっぽう、鉄は頑丈ですが熱伝導率が高く、火災では鉄骨が熱で折れ曲がり、家の屋根や外壁が崩れ落ちます。
木材の家は、建てる家にもよりますが、火事で火が燃え移っても、表面が焦げて炭になり、炭化することで急速な火のまわりを抑え、延焼の広がりを遅らせる事ができる場合があります。
建築工法によっては耐震性がある
「木造枠組壁工法」は、地震の揺れが枠組み材の一箇所に集中することを避け、壁面全体で受け止めて、振動エネルギーを分散して地表に流します。
大手ホームメーカーは、耐震構造の研究・実験に力を入れており、近年の注文住宅のモデルハウスでは、耐震性の高い注文住宅を販売しています。
品質が安定している
日本の風土に適した木造建築は、歴史があり、熟練した職人を抱える施工業者も多くいます。
住宅金融支援機構では、使用する木材や金物部品、施工方法のマニュアルを作成しており、安定した質の高い住宅が建てられています。
木造住宅は設計の自由度が高い
木造住宅は、建築構造が比較的シンプルで、設計しやすいというメリットがあります。
斜めに、大胆に、リビングに食い込ませた土間サロン。それは、愛犬(ゴールデンドゥードゥル)と家族の距離を近づけるため。お宅訪問記、公開しました。
「ペットと楽しむ 斜め土間の家」塩尻市A様邸 https://t.co/Ja88F129Dp pic.twitter.com/SOQa0vCCQV— 工房信州の家・フォレストコーポレーション (@koboshinshu) May 18, 2020
木造建築では、基礎・土台・柱・梁の仕様が細かく決められており、その基準を満たしていれば、あとは自由に設計することができます。
低い軒の木の家。
この家の木製全開サッシの幅は3メートル。
この家のリビングにはエアコンはなく、
この窓からの風がエアコンの代わりになっています。https://t.co/e4gt691nRp#木の窓 #木製サッシ #深い軒 #木の家 pic.twitter.com/HhTiO8e67S— 野口修一 (@noguchishuu) June 11, 2020
特に「木造軸組工法」では、骨組みをもとに組み立ててゆくため、部屋の大きさや形状を調整しやすく、間取りの自由度が高いのが特徴です。
柱や梁の骨組みで、構造が安定しているため、開口部を広くとっても建物の強度に影響しにくく、窓やドアを好きなところに設置しやすいと言えます。また、将来的にリフォームもしやすいことが、木造住宅のメリットとして挙げられます。
木造住宅のデメリット
木造住宅は、調湿効果があるので日本の気候に適しおり、設計の自由度が高く、建築費用も安くできるなどの多くのメリットがあります。
しかし、鉄骨造りやコンクリート造りの家に比べて、耐震性や防音性は劣る傾向にあります。
それでは、木造住宅のデメリットについて詳しくみてみましょう。
シロアリの被害が発生しやすい
木造住宅では、建物の基礎とる骨組みの木材に、シロアリなどの害虫が発生しやすいというデメリットがあります。
シロアリ対策としては、床下にコンクリートを敷き詰めたり、防アリ処理をほどこした材木を使用したり、定期的に点検することが必要です。
雨水の侵入で木材が腐りやすい
屋根や外壁の亀裂から雨水が侵入してくると、建物の基部の木材が内側から腐ります。
外見からも腐食に気付きにくいため、発見が遅れると、屋根や外壁の大規模な修繕工事が必要になります。
雨水から木材を守ために、定期的な外壁塗装や防腐処理が必要で、メンテナンス費用がかかります。
耐震性に劣る
木造住宅の耐震性は近年高くなってきましたが、それでも、鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りの建築工法に比べれば、耐震性が低いと言えます。
しかし、現在の建築基準法では、建築工法に関せず、震度6強~7の大規模地震でも倒壊しないように定められています。
木造でも「木造枠組壁工法」などは、地震の振動エネルギーを壁面で受け止め、地表に流すため、耐震性に優れています。
近年は、ハウスメーカーにより、制震システムに優れた戸建住宅の研究が進んでいます。
防音性が低い
材木は音を通しやすい性質があり、木造住宅は遮音性能が低くいというデメリットがあります。
幹線道路沿いの住宅や、楽器の演奏をする場合は、壁や床、天井などを二重構造にして、防音素材を入れるのがおすすめです。
品質にばらつきが生じやすい
木造建築は最も一般的な住宅であるため、建築業者が多く、施工のバラ付きが出にくいと言われています。しかし、工場生産の戸建て住宅に比べると、現地での作業工程が多く、職人の技術差による出来栄えの良し悪しがでやすいと言えます。
業者の木材の管理の仕方によっても、木材の品質も変わります。
木材の材質の見極めも素人目では難しいため、信頼できる施工業者に建築を依頼することが重要です。
耐火性の問題
木材は、一定温度までは耐火性がありますが、大規模の建物では、防火対策が必要です。
防火素材で木材を全て覆ってしまうと、木材の本来の木目の美しさがみられないことになります。
戸建住宅の建築構造と特徴
現在の日本の戸建住宅は、大きく分けて、木造・鉄骨造(S)・鉄筋コンクリート(RC)造で建てられています。
軽量鉄骨造りのメリットとデメリット
鉄骨(steel) 造りは、使用する鉄骨の厚みで、軽量鉄骨と重量鉄骨があり、一般住宅に使用されるのは軽量鉄骨です。
軽量鉄骨は、規定サイズで工場生産され、現場での建設がしやすいのが特徴です。軽量鉄骨の建物は、丈夫で地震に強く、木材のようなシロアリ被害などの心配があまりないと言われます。
しかし、鉄は錆に弱いため、防錆のメンテナンスも含めた定期的な外壁塗装が必要です。
軽量鉄骨の建物は、熱伝導率が高いため火災に弱く、アパート構造にみられるように、音が響きやすいデメリットがあります。
鉄筋コンクリートのメリットとデメリット
鉄筋コンクリートの「RC」は、rainforced concrete(強化されたコンクリート)の略です。
建設時に、鉄筋を入れたところにコンクリートを流し込み、鉄筋の入った強度の高いコンクリートの壁を造ります。
また、鉄骨鉄筋コンクリート造の「SRC」はSteel Reinforced Concreteの略です。鉄筋コンクリートの建築の骨組みに、「H型鋼」などの鉄骨(steel)を使用し、さらに耐震性の高い強固な建物を造ります。
鉄骨造りの持つしなやかさと、鉄筋の持つ強度を合わせた、揺れに強い構造が特徴で、高層マンションの建設に採用されています。
木造建築様式の種類
木造住宅は、建物の構造部分(柱・壁)に、木材を使用している住宅ですが、その建築方法には「木造軸組工法」と「木造枠組壁工法」があります。
「木造軸組工法」は、日本で昔から行われてきた建築方法で、「在来工法」とも呼ばれています。木材で、建物の骨格となる柱や梁(はり)を組み立て、そこに壁や床を取り付けてゆきます。
「木造軸組工法」では、部屋の大きさや形状を調整しやすく、自由な間取りの家が設計できます。
「木造枠組壁工法」は、200年ほど前にアメリカで始められた工法で、2×4インチの角材で枠組みを造り、壁、床、天井を貼り合わせて住宅を作ります。「壁面」で構造を支える構造で、地震などの振動を全面で受けて地表に流すため、耐震性の高い住宅を建てることができます。
まとめ
木造住宅は、高温多湿の日本の風土にあった古くからある建築様式で、現在でも、戸建住宅の主流となっています。
一般に、鉄骨造や鉄筋コンクリート作りの工法よりも施工費が安く、設計の自由度が高いのが特徴です。しかし、シロアリ被害の心配があり、雨水が木材の内部に侵入して腐ってしまうと、大規模な修繕が必要となります。
木材の種類や建築工法によっても、建物の寿命や耐火性・防音性が異なるため、信頼できる工務店、ハウスメーカーを見つける事が重要です。しっかりと計画して新築木造住宅を建てましょう。