屋内にいながら外の風景を楽しめるガラス張りの家は、開放的なイメージがあり、憧れの住まいですね。
ガラス張りの住宅では、庭や夜景などの借景を取り入れ、おしゃれで高級感のある住居空間を楽しむことができます。
しかし、ガラス張りであるために、プライバシーやメンテナンスの面で思わぬ不便さや維持費が発生します。
ここでは、ガラス張りの家の魅力と、そのメリットとデメリットについて紹介します。
ガラス張りの家のメリット
ガラス張りの住宅空間は明るく開放感があり、映画でみるような贅沢な住まいを提供することができます。
ガラス張りの家のメリットについて見てみましょう。
明るい生活空間
ガラス張りの家では、外の景色を生活空間に取り入れ、「借景」を楽しむオシャレ感があります。
また、昼でも電気がいる生活ではなく、明るい自然の採光を室内に取り入れることができるのが魅力です。
狭小住宅では、壁面の一部をガラス張りにすることで閉塞感がなくなり、広い空間を感じることができます。
扉や間仕切りをガラス張りにするだけでも、住居空間にぬけ感が生まれ、スタイリッシュな家になります。
FIX窓の安全性
ガラス張りの家の「FIX窓」では、誤って子供が転落するような心配がありません。
FIX窓とは、壁面にはめ込まれて固定されている窓で、「はめ殺し窓」とも呼ばれています。
ガラス戸のように開閉するのではなく、壁に大型の強化ガラスを埋め込む構造になっています。
2階リビングに大きな窓をつけても、子供の転落の心配がなく、開閉する窓ガラスではないため、防犯面でも外からの侵入を許しません。
中庭に面してFIX窓を設置することで、プライバシーを守りながらも、閉塞感のない広々とした安全な空間が演出できます。
一般の窓に比べて、FIX窓は窓枠を細くしたり、なくしたり出来るため、スッキリとした見栄えとなり、モダンなデザインに仕上がります。
ペアガラスの省エネ効果
ペアガラスは、2枚のガラス板からなり、内部に空気やガスを入れ、断熱・遮熱・遮音効果を発揮する優れた複層ガラスです。
温度差で生じる空気の移動を抑制し、日光による熱を遮断します。
省エネ効果を高めるために、空間層に乾燥空気を入れたり、真空にしたり、金属膜でおおったりするタイプもあります。
中間層にガラスを入れて3枚の板ガラスにしたものでは、断熱効果のほかに、結露の防止にも効果を発揮します。
省エネ住宅にするために、窓ガラスをサッシごとペアガラスに取り替える人もいて、ペアガラスの需要は増えてきています。
ただし、ペアガラスは厚さが12ミリメートル以上あり、普通のサッシの幅が9ミリほどなので、固定するための工事は必要となります。
近年人気のガラス張りバスルーム
日常生活で毎日利用するバスルームに、こだわりを持つ人も多く、近年ガラス張りのお風呂が人気です。
バスルームは北側の間取りなることも多いですが、壁面の一部をガラス張りにすることで、明るく開放感のあるくつろぎの空間が生まれます。
ガラス張りバスルームが主役の驚きのお部屋。緑道に面したお部屋は大きな専用庭も有【54.79平米/16.5万円/二子玉川駅/徒歩12分】http://t.co/fnfaN9S7m0 pic.twitter.com/AM7UuMMSVV
— TATO DESIGN (@TATODESIGN) October 14, 2015
外の塀さえしっかりとしておけば、中庭を作って、毎日が旅行に出掛けたような露天風呂気分が味わえます。
透明ガラスに抵抗感のある人は、くもりガラスを使用するだけでも開放感がでます。
洗面所や脱衣所の壁をガラス張りにする場合は、屋外からの視線も気にならず、広々とした住居空間が楽しめます。
狭小住宅では、バスルームの壁をガラス張りにすると、壁の圧迫感が軽減でき、部屋全体を広く感じさすことができます。
ガラスにも多様な種類がある
ガラスにも色々な種類があります。
瞬間調光ガラス
プライバシーを保護するため、最近ではスイッチひとつで、使用する時だけ曇りガラスにできる「瞬間調光ガラス」などの素材があります。瞬間調光ガラスでは、必要な時だけ一時的に曇りガラスに変えることができる便利さで、オフィス、商業施設、店舗などでも普及しています。
熱線吸収ガラス
「熱線吸収ガラス」は、車のスモークガラスのような色つきガラスで、鉄やコバルトなどの金属を加えて作られます。
グレーやブロンズ、グリーンなどの色があり、直射日光をやわらげて快適な室内環境を作り、省エネ効果も期待できます。
すりガラス
「すりガラス」は、ガラスの片面に金属ブラシなどで微細な傷をつけて、不透明度感を出し、くもりガラスにしたものです。
フロストガラス
「フロストガラス」は、すりガラスの表面を化学処理して滑らかに仕上げたもので、汚れがつきにくく目隠しに適しています。
型板ガラス
「型板ガラス」は、製造時に模様つきのローラーに通して、ガラスの片面に凹凸模様をつけたガラスで、窓、玄関、浴室などに使われています。
強化ガラス
「強化ガラス」は普通のガラスに熱処理をしたあと、急激に冷却して強度を高めたガラスで、粉々に砕けるため怪我をしにくいメリットがあります。
近年、ガラスの性能が良くなり、様々なタイプのガラスから選べるため、ガラスの家の多様性も高まりつつあります。
ガラス張りの家のデメリット
ガラス張りの家に憧れて建ててみたものの、実際に住んでみると、不便な点が多かったなどの意見もあります。
ガラス張りの家のデメリットについて見てみましょう。
FIX窓は開閉できない
ガラス張りでおおわれた「FIX窓」は、ガラス戸のように開閉できないため、窓を開けて空気の入れ替えをすることができません。
大阪府松原市重量鉄骨造新築工事
スチールサッシ施工中‼️
大型FIX窓等で全てオーダーメイドなので何度も何度も打ち合わせを重ね施工に至ってます😄
ブラック塗装の仕上がりが楽しみです‼️#カヤノキ建設 #榧木 #かやのん #重量鉄骨造 #新築 #大阪 pic.twitter.com/8sEEogttyP— かやのん (@kayanon1029) December 23, 2019
また、春先や夏の夕涼みに、気軽に外気を楽しむことができず、通気性も悪くなります。
全面をガラスで覆った構造では、火災時に容易にガラスを割って脱出することができないため、緊急時の避難経路を確保しておくことが大切です。
強化ガラスは防音効果がありますが、非常時に大声をあげても、助けを求める声が外に届きにくい、閉鎖された空間になってしまいます。
外部から中が見える
ガラス張りの家は、家の外が見渡せる解放感がありますが、その反面、外から家の中が見られることになります。
夜に室内の電気をつけると外から中が見えてしまい、プライバシーが確保できません。
外部から室内の気配が分かりやすく、外出による不在や長期に家を開ける場合は、不法侵入にあうリスクが高くなり、防犯への配慮も必要です。
万全のプライバシーを確保するには、ブラインドやカーテン、ロールスクリーンなどの設備が必要で、サイズに合わせて注文するためで費用も高くなります。
また、いつもカーテンを閉めているのであれば、普通の家と変わらなくなってしまいます。
ガラス面の掃除の手間と費用
ガラス張りの家は、ガラスの汚れが目立ちやすく、ガラス面を掃除するのに手間と費用がかかります。
家の外側は、高圧洗浄機などで清掃できますが、室内では手作業となり、ガラス全面を拭くのには労力が必要です。
高所に登っての作業ができない場合は、業者に依頼することになり、ガラス掃除に多くの費用がかかります。
断熱性に劣る
ガラス張りの住宅は、通常の壁の住宅に比べて外気の影響を受けやすく、断熱性に劣り、また、熱損失が大きくなります。
直射日光を遮るために、通常の壁面に比べてひさしを長く取る必要があり、ひさしがないと、熱気がこもり、冷えやすくなます。
夏場は温室のように暑くなり、夕方には西日がまぶしく差し込むなど、カーテンの使用が必要で、空調のランニングコストも高くなります。
安全面の心配
豪雨や強風の飛来物で破損する心配があり、保護のシャッターを設置するには、別途費用がかかります。
地震や台風などの災害時には、通常のコンクリートの壁のような強度は期待できません。
強化ガラスでも、万全の安全を確保するには、飛来物によると破損を前提とした飛散防止フィルムも必要です。
一ヶ所の破損でも、ガラス一枚を取り替えなくてはならないため、破損時の修理費用がかかります。
コーキングのメンテナンス
ガラスを壁面に取り付ける際に、隙間を埋める目地剤のシーリングを行いますが、そのコーキング剤が劣化するため、5年に1度ほどの補修が必要です。
コーキング剤は紫外線や風雨にさらされると劣化しやすいため、直射日光に当たる面では、特にチェックが必要です。
地震などの振動でガラスが固定できなければ、1枚100キロ以上のガラスが崩落する危険性もあります。
ガラス張りの家での注意点
ガラス張りの家は、視覚的には理想の家であっても、冷暖房のコストや維持費・防犯面での配慮が必要です。
全面ガラス張りの家にするのではなく、リビングなどの一部をガラス張りにして、解放感を演出するなどの工夫をしましょう。
壁面全てにガラスを埋め込むのではなく、下半分のみをガラスにして、庭の緑を取り込むこともできます。
また、上半分や一部を開閉できるガラス窓にすると、外気を取り入れ、外部へのアクセスが確保できます。
100坪ほどあるゆったりとした敷地があれば、庭の木々で目隠しもでき、素晴らしい理想の住居空間が実現できます。
まとめ
ガラス張りの家は、ガラスの性能が高くなってきたため、一般住宅でも一つの選択肢となってきています。
開放感のあるおしゃれな空間を作ることができる反面、空調や掃除などのランニングコストが高くなります。
デメリットを考慮しながらも、理想の住居空間を実現するために、様々な工夫をして、ガラスを住宅設計に取り入れてゆきたいものです。