プレハブと聞くと、工事現場の建物や災害時の仮設住宅を思いますが、近年住宅としてのクオリティーが高くなってきています。
プレハブ住宅は、日本では1960〜1990年代に多く建設され、その後建設件数は減少に転じました。しかし、ここ10年でも、住宅総着工数のうち、およそ7戸に1戸の割合でプレハブ住宅が建てられています。
ここでは、プレハブ住宅を検討しておられる方に、プレハブの特徴とメリットとデメリットについて紹介します。
プレハブとは
プレハブとは、Pre-fabrication(プレ・ファブリケーション)からきた日本語英語で、「事前に形作った」という意味合いを持ちます。
工場で構造体や壁・窓、床や屋根をあらかじめ作り、それを現地で組み立てる建築方法を、プレハブ工法と言います。
一般に、厚さ6mm未満の軽量鉄骨が用いられ、強度のある建物を短期間に建てることができます。
壁の有無にかかわらず、屋根と柱があるものは建物とみなされるため、プレハブ住宅も敷地面積に対して、建ぺい率・容積率の制限を受けます。
また、物置であっても、一般的には建築確認申請が必要ですが、10㎡以下で防火地域・準防火地域以外の場所であれば申請は不要になっています。
プレハブ住宅とユニット住宅
「プレハブ住宅」は、「ユニット住宅」と似ていますが、「ユニット住宅」の方が、より完成された状態で現地に運ばれます。
「ユニット住宅」は1990年代頃から日本で普及し始め、今では、工事現場の仮設建物はほぼユニットハウスです。
ユニットハウスは、箱型の建物として4トンのユニック車で運び込まれ、1日ほどで設置できてすぐに使用できます。
しかし、ユニットハウスはプレハブよりもデザインの自由度が低く、4トン車が入れない場所には設置できないものが多いと言われます。
一方、「プレハブ住宅」は、現場でパーツを組み合わせる作業が「ユニット住宅」より多く、施工日数はかかりますが自由度は高くなります。
工場生産の部材を、現場で組み立てるものを「プレハブ」と呼び、近年はおしゃれな「プレハブ住宅」も増えてきています。
プレハブ住宅の種類
プレハブ住宅は、建材によって分類され、木質系・鉄骨系・鉄筋コンクリート系などの種類があります。
「木質系プレハブ」は、既に工場で断熱材が入れられた木質パネルを、現地で組み合わせる工法で、建て方は2×4(ツーバイフォー)と似ています。
ツーバイフォーとは、2インチ×4インチの角材で枠を造り、床・壁・天井の6面に合板を組み合わせる木造建築で、枠組壁工法です。
「鉄骨系プレハブ」は枠組みに軽量鉄骨を使用し、「鉄筋コンクリート系プレハブ」は、工場で製造したコンクリートの壁を現地で組み立てます。
プレハブは住宅のほか、子供部屋・レッスン会場・事務所・店舗・物置・倉庫などに、幅広く利用されています。
プレハブ住宅の特徴
軽量鉄骨のプレハブ住宅は、建物の強度が高く、扉の開口部を広くとったり、大きな窓を複数設置したりすることが可能です。
バス・トイレ・キッチンなどは、サイズに合ったものから選んで、好みの住宅にカスタマイズできます。
地面に固定されている住居用プレハブは、一般住宅と同様に固定資産税の対象となり、評価額の1.4%で税金が算出されます。
近年、住宅用建材の質が向上し、外壁や屋根に断熱材や遮音材を使用することで、プレハブでも生活しやすい環境が作れるようになりました。
外壁におしゃれな「サイディング」を使用し、屋根・サッシ等を素材から選ぶ、フルカスタマイズのプレハブ住宅も人気です。
プレハブの大きさの単位は1間(ケン)は約1.8m、1坪(たたみ2畳)の広さ(約3.3㎡)で、「プレハブ住宅」はこの倍数で建てられます。
プレハブ住宅のメリット
プレハブ住宅は、一般の住宅より短い工期で建てることができ、コストも抑えることができるので、販売価格が安いのが特徴です。
プレハブ住宅のメリットについて見てみましょう。
工場生産ゆえの安定した品質
プレハブ住宅は部材が工場生産され、検品して出荷されるため、品質が安定します。
現地で施工する一般住宅のように、大工や左官職人の技術差で、建物の仕上がりにバラツキが出ることはありません。
パナホーム・積水ハウス・トヨタホーム・大和ハウスなどの、大手ハウスメーカーが研究開発し、性能の良いプレハブ住宅が工場生産されています。
管理の行き届いた工場で作られるため、一般の木材建築のように、建材の不良や板の反りといった不具合が発生するリスクも少ないといえます。
現地での部材組み立ては、ボルトやナットを使ったシンプルな作業で、現場の作業員による技術差がでることもあまりありません。
プレハブ住宅は工期が短い
プラハブ住宅で発注した建物はあらかじめ工場で生産され、現場では部材を組み立てる作業になるため、7~10日ほどの短期間で完了します。
ユニット工法では、住宅がほぼ完成した状態で現地に運び込まれるため、作業日数はさらに短くなります。
オーダーメイドのプレハブは工場で注文生産されるため、数ヶ月かかることもありますが、それでも一般住宅よりも短期間で建築できます。
工期が短いため建設中の雨で、建物の基礎部分の木材が、水濡れするリスクも少ないといえます。一般住宅の建設の場合は工期が長く、資材調達などの事情で、完成が遅れることがあります。
住んでいる家が売れて仮住まいが必要となったり、転勤・転校と転居のタイミングが合わなかったりすれば、余計な費用も発生します。
また、長期にわたる建設では、建築中に近隣からの苦情が起こることもあり、思わぬトラブルがおきることもあります。
プレハブ住宅は建設費が安い
プレハブ住宅は建築工期が短いため、現地で作業する職人の人件費が削減され、一般住宅に比べると建設費が安くなります。
工場で大量生産され、建材も大量仕入れされるため、製造費のコストダウンがはかれます。
効率的な生産で、現地で建設するより建材に無駄が出にくく、環境にも優しい住宅といえます。
プレハブ住宅は、遮熱・防音などの住宅環境にも配慮されて設計されているため、低価格で住み良い家が建てられます。
プレハブ住宅のデザイン性の向上
プレハブは建設現場の事務所のような殺風景なイメージがありますが、近年では、デザイン性に優れたプレハブ住宅が販売されています。
また、規格ごとに様々なパーツが製造されているため、素材が選べる自由度も増え、カスタマイズ性も高くなってきています。
バスやキッチンなどの水回りも、サイズに合わせて複数の種類の中から選べます。
ネットでも、様々なおしゃれなプレハブ住宅の事例が紹介されています。
プレハブ住宅のデメリット
プレハブ住宅は、一般的な注文住宅よりも設計の自由度が低く、熱やサビに弱いというデメリットがあります。
定期的なメンテナンスをしなければ、耐用年数が短くなってしまうため、デメリットについても認識しておきましょう。
プレハブ住宅のデザイン性の限界
最近のプレハブ住宅はデザインの自由度が高くなってきていますが、一般の注文住宅に比べると、カスタマイズ性には限界があります。
注文住宅のような自由度で間取りを変更したり、建材や設備を選んだりすることはできません。
画一的なデザインで工場生産されるため、個々の変更依頼には、追加費用が発生します。
企業は大量生産で建材や設備を安く購入し、販売価格を下げる努力をしているため、規格外の設計に費用が発生するのは避けることはできません。
耐用年数が短い
軽量鉄骨の住宅は、鉄骨の厚さで法定耐用年数が、19年や27年と異なります。
法定耐用年数は、骨格材の厚さが3mm以下は19年、3mm超4mm以下は27年となっています。※2
一般的なプレハブ住宅には、厚さ6mm未満の軽量鉄骨が用いられており、仮設住宅のようなプレハブの寿命は、15~20年といわれています。
軽量鉄骨のプレハブでは、床や壁などのリニューアルができるため、しっかりと維持・管理すれば、40年50年と使うことも可能です。
しかし、塩分を含んだ潮風にさらされたり、湿度が高かったり、気温差の激しい環境では、鉄骨に錆びが生じやすく劣化が早まります。
耐火性に劣る
軽量鉄骨でできているプレハブ住宅は、耐火性に劣るというデメリットがあります。
鉄骨は火災で一定の高温になると、急に強度が低下し、建物の倒壊リスクが高くなります。
一方、鉄筋コンクリート系のプレハブは、工場で生産された鉄筋コンクリートパネルを使用するため、耐火性には優れています。
隣接道路が狭いと資材搬入できない
プレハブ住宅は、搬入する素材の大きさによって、トラックの搬入やクレーン車などの重機での取り付けが必要となります。
隣接道路の幅や開口部が狭い場合は、車が入れないために、建てられないこともあります。
解体して運ぶなどの作業のために、追加費用が発生することもあるため、事前に建築可能な用地であるかを確認する必要があります。
プレハブ住宅に関する注意点
ほとんどの大手ハウスメーカーが、プレハブ住宅を販売しており、プレハブ住宅は現在とても身近な存在です。
ワンルームのコンパクトなものから、2DK、2LDK、3DKの規格があり、2階建やオーダーメードのプレハブ住宅も可能です。
バス・トイレ・キッチンなどのグレードを上げると価格が高くなるほか、土地の整備や電気・水道・ガスなどのインフラに接続する費用が別途発生します。
一人暮らし用のプレハブ住宅であれば、安いもので80万円代から設置可能ですが、快適に暮らすにはそれなりの費用が必要です。
通販でもプレハブ住宅が販売されていますので、希望タイプの価格をネットで調べてみることをお勧めします。
まとめ
プレハブ住宅は、事前に工場で製造された部品を、現地に運んで組み立てる工法で建てられる住宅です。
木質系・鉄骨系・鉄筋コンクリート系などの種類があり、現在も様々な用途で使用されています。工場生産のため品質が安定していて、短期間に低価格で建てられるメリットがあり、近年デザイン性もよくなってきました。
しかし、一般の注文住宅のような自由度はなく、耐用年数が短く、車両運搬の面で設置できないこともあります。
また、建築確認申請やインフラに接続する費用がかかり、固定資産税も発生します。
ほとんどの大手ハウスメーカーがプレハブ住宅を販売しており、通販でも売られています。
土地はあるので、できるだけ安く家を建てたいとなどの希望のある方は、プレハブ住宅も一つの有効な選択肢ではないでしょうか。