最初に
「新築もいいけど、価格が魅力的な中古住宅も気になる…!」そんな方が増えているようです。近年は住宅産業を取り巻く法整備が進み、建築技術も向上したことから質の高い中古住宅が増えていることも一つの理由でしょう。
国土交通省は住宅政策における新成長戦略の一つに「質の高い新築住宅の供給と中古住宅流通・リフォームの促進を両輪とする住宅市場の活性化」を掲げていて、平成29年からは購入者の不安を払拭するため一定の性能を保ち、瑕疵担保保険を付帯することが可能な中古住宅を「安心R住宅」として認定できる制度を開始。扱う中古住宅に認定マークを付けることができる事業者数も増えてきています。
低価格で購入できることに加え、購入前後に自分好みにリノベーションできることも魅力の中古住宅。どんなふうに選んだら良いのか考えてみましょう。
心から「お願いしよう」と思える業者を選ぼう
ネットや雑誌・新聞の折込チラシなどで数多く目にする中古住宅の広告。最初にわかっておきたいのは、新築住宅を取り扱うのはハウスメーカーや地元工務店であることに対して、中古住宅はほぼ全てが不動産業者であるということ。
問い合わせや内覧の申し込み時の対応で質問に丁寧に答えてくれるか、契約を急がせずに十分な検討期間を取ってもらえるか、引渡し後の保証の有無なども確認して、信頼感のある業者から購入するのがベストです。
また、国土交通省が推進する「安心R住宅」の登録事業者団体に属している業者であれば、販売している物件は一定基準以上の耐震性を有して保険にも加入できる状態であることがはっきりしているほか、リフォームされているかリフォームの提案が付帯しているので安心です。広告などに国が定めた「安心R住宅」のマークが表示されています。
ずっと住むところだから…立地を吟味すべし!
地方だと地域によっては地価が安いこともあり、かなりの低価格で中古住宅が手に入れられることがあります。「えっ、こんなに安いの?」と気になる方も少なくいないでしょう。でも、勢いで契約に走ってしまう前に落ち着いて立地を考えてみましょう。スーパーやコンビニエンスストア、病院、学校といった暮らしに密接に関係のある施設までどのくらい離れているか、役所関係までの距離はどのくらいかなどの利便性は意外と重要です。
また、河川などの近くであれば水害のリスク、山林の近くであれば土砂災害のリスクを考えた方が良い場合があります。市町村で発行しているハザードマップなどをチェックしてみるのも良いでしょう。
山林に近い場合は日の出が遅くなったり日の入りが早まったりしますので気になる方は要チェックです。立地の良し悪しは将来売りに出そうとした場合の価値に大きく関わりますのでよく検討しましょう。
建物が歩んできた歴史。中古住宅はそれを知ること必須なり!
中古住宅は不動産業者が取り扱うので「いつ、どんなビルダーが建てたのか」については尋ねてみる必要があります。著名なメーカーや地元でも有名な工務店が建てた物件であれば、そのメーカーや工務店が特長としている工法を知ることができます。また、増改やリフォーム歴がある場合もあるので、確認しておきましょう。
冒頭で書いた「安心R住宅」であれば建物の履歴情報を全て確認し、求めに応じて開示されますので安心です。
リフォームされていればその内容、されてない場合でもリフォームの提案もなされます。耐震性も一定基準を満たしています。万一不具合があった際でも瑕疵担保保険に加入できるので安心です。
一般に売りに出されている建物は特別な場合を除き保険の対象とはならず、不具合が発生した際には購入者の負担で修理することとなりますので、できる限り不具合がないかチェックしましょう。壁や天井に雨漏りによるシミがないか、床が不自然に沈む個所がないか、給湯器や冷暖房設備は問題なく作動するかなども確認しましょう。
建物内部だけでなく、外観や外構の状態もチェックしましょう。1階に柱のない広い空間が存在する場合は耐震性に不安があります。土が露出している部分が多ければ、夏期に雑草が生い茂る可能性もあります。また、比較的新しい建物なのに低価格で売リに出されている建物については、なぜ元の持ち主が手放したか理由を聞ければベストです。
権利関係の書類も事前にチェックした方が無難です。登記簿謄本には権利関係が記されています。
広い家は嬉しい!でも…思い切る前にちょっと考えたいコト
広く大きな家に憧れる方は多いです。特に狭いアパート暮らしが長かった方であれば尚更です。でも、ちょっと考えてみましょう。家族構成から考えてあまりに広い家は普段の掃除が大変です。部屋数が多過ぎると「使わない部屋」が存在することとなりますので検討が必要です。
お子さん方が家を出る可能性が高い場合は日常で使う部屋数が減るということ。その後の暮らしを想像してみることも必要です。また、空調の面でも広すぎると効率が悪くなりがちです。家事動線なども内覧時に頭の中でシミュレーションしてみましょう。建物の大きさは購入後の固定資産税にも影響してきます。
中古住宅購入後に自分好みのリノベーション!気をつけたいことは?
欧米のように、購入後住まいの様々な部分でDIYに取り組まれる方も増えてきています。壁の塗装やフローリングのリニューアルなどであれば仕上がりさえ自分で納得できればどんな方法でも良いでしょう。しかし、業者に依頼するなどして壁を取り払ったり部屋数の変更を伴ったりするリノベーションはちょっと気を使う必要があります。
まずその建物が在来工法(軸組工法)で建てられたのか、2×4工法(枠組壁工法)で建てられたのかを必ず調べましょう。在来工法は柱を取り去るようなことが無ければ基本的に壁の減少を伴うリノベーションを行なっても大きな問題はありません。2×4工法は壁で建物を支えている工法です。よく「2×4工法はリノベーションができない」と言われますが、必ずしもそうではありません。
壁の中で「耐力壁」と呼ばれる壁さえはっきりしていれば、それ以外の部分はリノベーションが可能です。新築時の図面を確認して、どこが耐力壁なのか調べてみましょう。その場合、2×4工法を得意とする専門業者に相談することをお勧めします。
最後に…賢い選び方で心から満足できる中古住宅を
文中でも触れましたが、国は既存住宅(中古住宅)の市場活性化に力を入れる政策を講じていて「安心R住宅」という“お墨付き”を与え、購入者の不安を払拭する取り組みも始まっています。一方でそれ以外の物件も数多く存在する中古住宅市場。
中古車が走行距離を重ねてきているように、中古住宅は時を経ています。自動車は工場で生産されますが、住宅は1件ごとにほぼ手作業で建築されたもの。それだけに売りに出されている中古住宅が今どんな状態なのか、できる限り細かくチェックすることが購入後のトラブル防止につながります。
上手に購入できれば経済的に戸建て住宅が購入できる中古住宅。後悔しない、満足できる結果を得るためにしっかり検討したいですね。