賃貸住宅を探すときに、「アパート」と「マンション」の根本的な違いはどこにあるのか気になったことはありませんか。
実はこれは、不動産屋さんが顧客に聞かれる質問のトップ3に入るくらい、多くの人がお部屋探しで疑問に思う点です。
また、建物には「ハイツ」「メゾン」「コーポ」などのさまざまな名称がついていて、どんな名称の物件を選んだら良いのか迷いますね。
マンションとアパートの違いの基本的な知識を持っていれば、希望する物件をより早く、より良い部屋を見つけることができます。
賃貸物件探しの助けになるように、今回はアパートやマンションについている名称や、賃貸住宅の建物の種類と特徴、住居環境の違いについて説明します。
アパートとマンションの建築工法の違いとは
まず、誰もが気になる「マンション」と「アパート」の根本的な違いについてです。
例えば「新築物件」は、「宅地建物取引業法」で、「築1年以内で以前に入居者がいないこと」などを条件として規定されています。
しかし、アパートとマンションの区別に、そのような法律的な明確な基準はありません。
建築物に関する「建築基準法」でも、アパートとマンションを区別する内容について、定義されている部分はありません。
そのため、集合住宅を「アパート」という呼び方にするか、「マンション」という呼び方にするかは、家主や不動産業者に任せられています。
アパートとマンションの業界の一般的な認識
一般的な商習慣として、不動産会社の広告で、アパートと呼ぶかマンションと呼ぶかは、「建物の構造」で分類されています。
建築物はその構造から大きく、木造・プレハブ・鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリートの4つに分類されます。
一般に、不動産業界では、木造・プレハブは「アパート」、鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造は「マンション」と呼ばれています。
また、「アパート」は、共同住宅を意味するアパートメント(apartment)から来ており、木造やプレハブの2階建て以下の集合住宅をいいます。
アパートに分類される建物の建築工法は、木造、または、プレハブ造になります。
木造アパートの特徴
木造アパートは、主要構造部分に木材を使用した共同住宅で、また、日本の住宅では、木造建築は現在でも主流の建築工法です。
賃貸用木造アパートは材料費が安く、建築コストが低いため、賃料が比較的安く設定されています。
しかし、木造家屋は火事の時に火の周りが速く、耐火性に劣ります。
また、1981年6月の「耐震基準法」改正前の建物では、構造的に耐震性に不安があるものもあります。
さらに、2000年6月に、木造建築物の耐震基準に関する法改正が行われているため、それ以降に建築された物件の方が安心できると言えます。
プレハブ造のアパートの特徴
プレハブ造は、英語の「pure(事前に)fabrication(作る)」からきており、「プレ・ファブリケーション」、「軽量鉄骨造」とも呼ばれています。
プレハブは、工場で生産した軽量鉄骨の建材を現地で組み立てる工法をとり、他の鉄骨造と区別されるのは、使用する鋼材の厚さです。
プレハブの軽量鉄骨造りでは、鋼材の厚さは6mm未満となっています。
プレハブは資材を大量生産するため、建築材料費を抑えることができ、工場生産で品質が安定し、短期間で建設できるので工費も安くなります。
モジュールを組み立てる工法で、太い柱がないぶん部屋面積が広く、シンプルかつ機能的な設計で、近年では建材の質もかなり上がってきています。
マンションの建築工法:「RC」と「SRC」とは
日本の不動産業界では、厚さ6mm以上の鋼材を使用した、鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造の集合住宅を「マンション」と呼んでいます。
ところで、マンションの物件広告で「RC」や「SRC」の記載がよく見られますが、この二つの表記はどう異なるのでしょうか。
これらは建築工法を意味し、「RC」は「鉄筋コンクリート造」、「SRC」は「鉄筋鉄骨コンクリート造」を意味します。
鉄筋コンクリート造(RC)
「鉄筋」とは、細い鉄の棒(12~16ミリ)を束ねたもので、「鉄骨」は、Hの形をした鋼の太い柱です。
「鉄筋コンクリート造(RC)」は、「Reinforced Concrete」の略で、鉄筋を入れた枠型に、生コンクリートを流し込んで壁を作ります。
壁内部に、鉄筋をいれてコンクリートを強化(reinforce)するので、「強化コンクリート」とも呼ばれています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)
「鉄骨コンクリート造(SRC)」は、「Steel framed Reinforced Concrete」の略です。
鉄骨(steel)で柱や梁(はり)などの枠組み(frame)を作り、壁を張り付ける建築方法で、これに鉄筋コンクリートの外壁を併用するのが一般的です。
鉄骨で強度があるため、耐震性の面から高層マンションには、SRC構造が採用されています。
しかし、近年、強度の高いコンクリートの開発が進み、RCでも耐震性の高い構造のマンションも建設されています。
賃貸住宅の名称の違いとは
次に気になるのは、アパートやマンションについている名称の違いです。
マンションの英語本来の意味は「mansion:豪邸」で、広大な敷地に建つ立派な邸宅をさし、日本の集合住宅のマンションとは全くイメージが異なります。
また、最近では、「〇〇〇荘」という賃貸アパートは見かけなくなり、「コーポ」「ハイツ」「メゾン」「ヴィラ」などのさまざまな名称がついています。
これらの名称も、建築法や宅建業法では明確な定義や決まりはなく、家主や不動産会社によってつけられています。
名称の語源と日本での使われ方
名称本来の語源は、マンションが大豪邸を意味するのと同様に、日本で使われているニュアンスとはかなり異なるものが多いことが下記からもわかります。
コーポ | 英語 | cooperative house | 共同住宅 |
ハイツ | 英語 | heights | 高台や丘にある家 |
ハイム | ドイツ語 | heim | 家 |
メゾン | フランス語 | maison | 家 |
カーサ | イタリア語 | casa | 家 |
ヴィラ | 英語 | villa | 住宅・別荘 |
マンション | 英語 | mansion | 豪邸 |
レジデンス | 英語 | residence | 豪邸 |
コート | 英語 | court | 庭のある大邸宅 |
シャトー | フランス語 | chateau | 城 |
パレス | 英語 | palace | 宮殿・公邸 |
レジデンスやコート、シャトーやパレスは、特に高級感のある設備の整ったマンションにつけられています。日本では、主に、コーポは10メートル以上の中層共同住宅、ハイツやヴィラは木造、プレハブ(軽量鉄骨造)の共同住宅が一般的です。
賃貸住宅の名称は持ち主が自由に決めるため、木造や軽量鉄骨造のアパートでも、マンションという名称がついている場合もあります。
お部屋探しの際に、不動産業者に建物の構造まで聞いてみるのも、賢い物件探しの方法かもしれません。
アパートとマンションの建物の違い
前述の通り、アパートは木造・プレハブ、マンションは鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造ですが、その他にも建物の造りに違いがあります。
一般的に、アパートは2階まででエレベーターやバルコニーがなく、マンションは3階以上でベランダやバルコニーのある大規模な建物です。
マンションは管理が行き届き、管理人が常駐していたり、また、業者による定期的な清掃が行われたりしています。
マンションは維持管理に費用がかかるため、アパートより共益費が高く設定されています。
建物の構造上、マンションの方がアパートよりも防音性があり、騒音で悩むことは少ないと言えます。
アパートやマンションの賢い選び方
それでは、賃貸物件探しでアパートやマンションを選ぶときに、どのような点を注意して選べば良いでしょうか。
木造アパートのメリットとデメリットとは
木造アパートは、木造建築の特徴で通気性が高く、吸湿性に優れているため、夏は熱がこもりにくく、冬は結露が出にくいというメリットがあります。
近年では建築技術が進み、木造建築でも耐震性の高い、耐久性のある住宅が増えてきています。
鉄筋コンクリートのような太い柱や梁(はり)がないので、部屋を隅まで広く使えるのもメリットです。
一方、気密性が低いため、外の騒音が伝わりやすく、また、エアコンなどの冷暖房も効きにくいというデメリットがあります。
アパートの選び方
アパートの物件探しでは、南・東向きで日当たりがよく、ビルの日陰にならない物件を、日中に内見するのがおすすめです。
日当たりの良い物件は、洗濯物も乾きやすく、採光を取り込みやすくて室内も明るく、住み心地の良い環境がそろいます。
しかし、騒音が伝わりやすいため、線路や幹線道路沿い、工場の近くの場合は、内見の際に騒音チェックをしておくのをおすすめします。
また、アパートの壁が薄い場合は隣室からの騒音に悩まされることもあり、リビングやバス、洗濯機置き場などの間取りも、図面で確認しておきましょう。
ゴミ集積所やポスト、自転車置き場などがキレイに保たれているか、また、外から見たベランダの様子でも、住民の生活マナーが分かります。
マンションのメリットとデメリット
マンションは鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造のため、木造やプレハブのアパートよりも遮音性・防音性に優れています。
また、24時間のゴミステーションやオートロック、防犯設備やWiFi完備の物件もあり、住みやすい環境が整っている賃貸マンションも増えています。
賃貸マンションでは、入居審査がアパートよりも厳しいため、一般的に住んでいる人の生活マナーが良く、住民間のトラブル発生率も減ります。
しかし、都心部の幹線道路沿いや繁華街に建てられているマンションでは、車の騒音が激しく、深夜でも救急車やパトカーの音が鳴り響きます。
また、マンションは窓を開けていると排気ガスが入り、床や壁が黒ずんで、掃除が大変というデメリットがあります。
空気汚染などの健康被害が気になり、常にエアコンをかけていると、光熱費も高くなります。
また、入居者が多いマンションでは駐車場や駐輪スペースが不足し、別途駐車場を借りる場合は、費用や不便さも発生します。
賃貸マンションの選び方
マンションは都心部に多く、騒音問題では、幹線道路から一筋入るだけでもかなり静かになることもあり、内見の際に騒音確認しておくのがおすすめです。
マンションという名称がついていても、鉄筋・鉄骨作りでない物件もあるため、建物の構造についても確認しておきましょう。
マンションはアパートに比べて共益費が高いため、家賃の他に必要経費がどのくらいかかるか、駐車場・駐輪所スペースもチェックしておきましょう。
また、入居者が廊下に物を置いていないか、ゴミステーションはきれいか、供用部分にゴミやチラシが散らばっていないというところも、チェック項目です。
駐車場に改造車などが停まっていないか、ベランダを物置にしていないかなどの外観からも、居住者の暮らしぶりがわかります。
一般に、角部屋の方が、採光が良く風通しもあり、隣人の生活音に悩まされることも少ないと言えます。
まとめ
賃貸物件探しでは、「マンション」と「アパート」の違いや、「ハイツ」「メゾン」「コーポ」などの名称にも惑わされがちです。
現状では、法律上の明確な定義はなく、家主や不動産業者が自由に命名できるようになっています。
一般に、木造・プレハブ造が「アパート」で、鉄筋・鉄骨コンクリート造が「マンション」と呼ばれています。
名称が何かよりは、建物の建築工法で、その物件のメリット・デメリットを見極めることが大切です。
立地条件や住みやすさ、広さや周辺環境も考慮して、自分の予算にあった物件を探すことが大切です。
また、内見では、日当たりや騒音、共用部分のキレさや住民の暮らしぶり、昼と夜の環境の違いなども確認するのをお勧めします。