六本木の高層マンションに始まり、タワーマンションに住むことは、成功者の証のようなイメージがありますね。
都内では、芝浦、中目黒、武蔵小杉、大崎と次々とタワマンが建てられ、投資物件としてもブームを呼んでいます。
横浜のみなとみらい、大阪の北浜、名古屋の栄や本郷など、都心部のタワーマンションが急増し、大々的な物件広告が目を引きます。
タワーマンションはビル自体が、デザインもスマートで美しく、エントランスも豪華で、セキュリティが高く、メリットばかりが強調されがちです。
しかし、欧米では、必ずしもタワーマンションに価値を見出さず、低所得者向き建物というネガティブなイメージを持つ人もいます。
アクセスの良い都心で暮らすことのメリットは、既に十分に宣伝されているため、今回は、タワーマンションのデメリットについて紹介します。
「憧れのタワーマンションを購入したが、こんなはずではなかった」と、後悔のないよう、ベストな物件探しの参考にしてください。
タワーマンションの定義とメリット
タワーマンションと呼ぶための、法的な条件や厳密な定義はありませんが、一般に20階以上をタワーマンションと呼んでいます。
建築基準法では、高さ60m以上の建築物を「超高層建築物」とし、60mを階数であらわすと20階程度となるためです。
タワマンは超高層建築物として国土交通大臣の認定が必要で、100m以上は屋上に緊急時のヘリポートを設置する義務があります。
眺望のよい上層階の部屋があり、駅から徒歩数分という好立地が多く、低層階に商業施設が入り、生活の利便性にも富んでいます。
都心でも、敷地に対する持ち分割合が全戸数で按分されるため、土地評価額が低く、固定資産税は低層マンションより安くなります。
タワーマンションのデメリットとは
タワーマンションはいいことばかりのように思えますが、実際に生活してみると、費用や住居環境、生活面で思わぬ不便さや問題点に直面します。
タワーマンションで後悔する前にありがちな問題点を記載します。購入物件で問題がないか事前に確認しておきましょう。
管理費の費用を確認しておこう
タワーマンションには、最上階や低層部にゲストルームやパーティールームなどの共有設備がついているのが売りになっています。
プール・スパ・温泉・ジム・フィットネスクラブ、ワークスペースやスタディルーム、図書室やシアター、キッズルームやバーなどの施設付きもあります。
保育園や医療機関の出張所があったり、コンビニやスーパーが入っていたりするタワーマンションもあります。
WiFiや24時間ゴミステーション・宅配ボックス、高度なセキュリティ体制が利用でき、震災では緊急時のヘリポートから救出作業も行われます。
しかし、これらの設備の維持費は、全て管理費に含まれており、実際に全ての機能を使う人は少なく、使わない施設に管理費を支払うことになります。
毎月の管理費・修繕積立金が、月額10万円を超えるタワーマンションもあり、本当に費やしたいことにお金を使いたい人にとっては無駄な出費です。
購入当初は管理費が割安に設定されていても、入居後に値上げされたり、目当てにしていた設備が閉鎖されたりすることもあります。
高層階で日差しの影響があるところがある
タワーマンションの高層階は眺望が良く、陽当たりや風通しがよいですが、その反面、直射日光の影響を受け、夏場に非常に暑くなる部屋もあります。
そのため、空調機に依存して生活しなければならず、電気代がかかるうえ、大規模停電などでは、生活基盤が根底から崩れることになります。
高層階の風の影響
特に沿岸部のタワーマンションでは、潮風の影響を受け、強風が吹きつけるために洗濯物が干せないうえに、危険でベランダにも出られない時もあります。
風の強い日は、ガラス戸を開けると突風が吹き込んで危険な状態になり、窓を閉めていても風の音に悩まされる物件もあります。
高層階に届きにくい携帯電波
携帯電波の基地局の高さは一般的に約40mで、ビルの13階くらいまでになります。
そのため、高層階では携帯電話の電波が届きにくいケースがあります。携帯のみで考えている場合はタワーマンションを契約する前に確認しておきましょう。
低層階で日当たりの悪いところがある
タワーマンションの低層階で、ビルの谷間になる場合は、冬は日当たりが悪く冷え込みがひどくなります。
夏場はヒートアイランド現象で、熱がこもって蒸し暑くなり、夜間にも気温が下がらず、熱帯夜で熱中症の危険が増大します。
住む前に確認しておいた方がよいです
低層階は騒音が響くところも
タワマンは幹線道路沿いに建設されることも多く、道路との距離が近いところでは、騒音に悩まされることもあるので注意が必要です。
特に都心部では、夜間でも救急車やパトカーのサイレンが一晩中響くこともあり、都会の騒音に慣れるには、かなりの時間がかかります。
窓を開けると大量の排気ガスやホコリが入ってきて、フローリングがすぐに黒ずむなど、掃除や洗濯干しでも汚れが気になります。
タワーマンションの低層階は売却しにくい?
タワーマンションは眺望が売りとなるため、低層階の物件は、売れるのに時間がかかると言われています。
「眺めがよくなければ、タワマンといえども普通のマンションと変わらない」という見方が根強いようです。
投資目的で低層階を買って、転売できずに負債を抱えるケースもあり、低層階の物件は、投資リスクも考慮しておきましょう。
景観のため洗濯物がベランダに干せないところがある
一般に、タワーマンションでは、景観を損ねるとして、布団や洗濯物はベランダに干せないなどの制限があります。
天日干しの自然乾燥は難しく、必然的に、浴室乾燥機や乾燥機付洗濯機、布団乾燥機などの電化製品に頼らなければなりません。
高額な大規模工事の修繕積立金
タワマンでは大規模修理の工事費が高く、築年数の経過で修繕積立金が値上げになったり、高額の一時金が徴収されたりすることもあります。
高層階までクレーンが届かないため、外壁塗装や建物の不具合の補修に、高額の費用が発生します。
現状では、築年数の浅い物件が多く、マンション設備の寿命と言われる50年後に、実際にどれほどの修繕費が必要になるか予測できません。
固定資産税・都市計画税の負担
建築基準法では、高層マンションが建築可能なエリアが限定されており、都市計画の用途地域で言うと、商業地域・工業地域になります。
これらの地域は、地価の高いエリアです。
タワーマンションでは、土地に対する所有権を全戸で按分しますが、それでも都心部では固定資産税が高いところも多く、都市計画税も払わなければなりません。
子育て環境の確保の難しさ
タワーマンションは利便性が良い反面、住宅環境としては、騒音や排気ガスなどの健康被害が気になる物件もあります。
また、周辺地域に歓楽街があれば、風紀や治安の面で、子育て世代には大きな不安が付きまといます。
子供を安全に遊ばすことのできる公園が少なく、保育所や学校選びに苦労することもあります。
都心部の物価の高さ
周辺にショッピングセンターなどの商業施設のある地域では、買い物に便利な反面、通常のスーパーを利用する庶民的な買い物ができません。
日常の買い物も、高級スーパーやコンビニですましがちになり、物価が高い分、生活費も多くかかります。
都心部では、近くに駐車場を確保するのも難しく、駐車場代も高額になります。
タワーマンションは災害・停電時のリスクがある
新しいタワーマンションは災害に強いと言われています。最近のタワマンでは電線や電話線などが地下に置かれているからです。台風の停電対策に優れているタワーマンションが多くあります。
しかし、台風や震災で、直接浸水などの被害を受けていなくても、停電でビルの給水設備が止まり、水道水やトイレの水が使えなくなる事例がありました。
また、直下型の大震災レベルの地震がきた時の影響はわかりません。
エレベーターが停止していれば、トイレの使用や吸水のために、階段を上り下りしなければなりません。
高層階の地震の横揺れ
タワーマンションは、耐震性に優れている反面、制振・免震構造のため、高層階はしなるように揺れる構造と言われています。
阪神淡路大震災の際は、埋立地のタワーマンションの高層階で、グランドピアノが壁を突き破ってきたなどのケースが報告されています。
エレベーターは地震の揺れを感知するとすぐに停止するため、震災時には孤立状態になり、階段を使って避難する必要があります。
エレベーター・駐車場・駅などの待ち時間の長さ
タワーマンションでは24時間体制で、管理人や守衛が在中し、駐車場に専用のスタッフが常駐しているところもあります。
タワーマンションはセキュリティーが高い反面、混雑する時間帯には、エレベータや駐車場の待ち時間が長くなります。
また、都心沿線ではタワーマンションが密集するところでは駅が混雑するところがあります。
時間のない朝の出勤や、急いで外出する際に、その待ち時間の長さに、精神的なストレスを感じることも多いようです。
鍵の管理の不便さ
タワマンでは、鍵が電子的に管理され、エントランスやエレベーターで鍵をかざさなければ入居できず、住居のある階までたどり着けないころもあります。
スペアキーを作る時も、管理会社への申請が必要だったり、また、指定された会社しか利用できないなどの面倒さもあるようです。
付き合いからくるストレス
タワーマンションの高層階は富裕層向けの1億円を超える物件もる一方、低層階は比較的リーゾナブルな価格帯もあります。
同じタワーマンションの建物内で、生活レベルの違いから、住人の間で劣等感やねたみなどの感情も発生したりする事も。
子育て世代の人たちがママ友などの付き合いを通して、派手な暮らしぶりの見栄の張り合いがおきたり、心理的な負担を抱えたりする人もいるようです。
海外投資家とのトラブル
都心のタワーマンションでは海外投資家も多く、中国系のオーナーとの間で、生活習慣の違いからくるゴミ出し等のトラブルが発生することもあるようです。
また、海外投資家は直接住まずに賃貸にだす場合、住居環境の維持に無関心な住人も共有施設を利用することになります。
国が異なることで契約や取り決めの理解が及ばず、管理費・修繕積立金を滞納したり、総会の維持管理に関する採決に困難が生じるケースもあります。
まとめ
都心のタワーマンションの人気は高く、入居は「早い者勝ち」となり、購入の判断を迫られることも多いようです。
高層階では眺望が楽しめる反面、実際に生活すると不便さを感じ、また、震災時には、電気が復旧するまで生活することが困難になります。
低層界は比較的リーズナブルな値段で購入できますが、眺望がないために売却時に苦労することも多いです。
しかし、住宅購入ではローン返済期間もあり、できるだけ若い時に借入を始めたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
これらのデメリットは、あくまで想定されるデメリットの例であり、タワーマンションを住宅購入の選択肢から除外するものではありません。
職場とのアクセスや立地条件の将来性も含めて、最適なマンション選びをする際の参考にしてくださいね。