住宅用太陽光発電のメリット・デメリットについて

住宅の屋根に太陽光パネルを設置し、太陽光発電を導入している家が増えてきています。

建て売り住宅でも、太陽光発電システムが備わったものもあり、これから住宅を購入しようと考えている人も、そのメリットが気になるところです。

太陽光発電は、家計の光熱費の節約や、災害時の停電時に大きなメリットがあります。

今回は、住宅用の太陽光発電の仕組みや、そのメリット・デメリット、また、設置の費用やメンテナンスを含む今後の課題について説明します。

住宅の太陽光発電の仕組み

家の屋根に太陽光パネルを設置するにあたり、住宅用の太陽光発電は、どういった素材で、どのような仕組みになっているのかを理解しておきましょう。

住宅用の太陽光発電とは

住宅用の太陽光発電とは、「ソーラーパネル」を屋根に設置し、太陽光線で自家発電する仕組みです。

ソーラーパネルは、「太陽電池板」、「太陽電池モジュール」とも呼ばれており、小さな太陽電池を複数集めてパネル状にしたものです。

1枚のソーラーパネルで発電量は、サイズや結晶のタイプによって異なり、1辺が数十センチのパネルで、10~100ワット程と言われています。

ソーラーパネルの品質や管理、天候や設置条件により、実際の発電量にはかなりの幅があります。

複数のパネルで発電した電気を、「接続箱」と「パワーコンディショナー」を介して屋内に取り込み、家庭用電力として使います。

消費しなかった電気は、蓄電したり、電力会社に売電したりすることが可能です。

ソーラーパネルとは

ソーラーパネルは「光子」と呼ばれる、太陽からの光エネルギーを使って発電するパネルで、表面や基板の素材には「結晶シリコン」が使われています。

パネル表面は、ヒョウや雨、積雪の重みで壊れないよう保護されていますが、破損して基板内に水が入ると、金属配線が腐食するリスクがあります。

個々の太陽電池の起電力は小さいですが、直列に組むことで電圧を上げ、さらにそれを並列に組んで、電流量を増やす仕組みになっています。

夜間など、光が当たっていないときに電気が逆流することがあり、逆流防止のダイオードなどの設置が必要です。

また、高温になると発電効率が悪くなるため、背面から放熱できるよう、設置に工夫が必要です。

太陽光発電の周辺機器

太陽光発電には、ソーラーパネルの他に、パワーコンディショナや接続箱、分電盤、発電量確認モニターなどの、さまざまな周辺機器が必要になります。

パワーコンディショナ

ソーラーパネルで生産された電力は「直流電力」であるため、「パワーコンディショナ」で、電力会社と同様の「交流電力」に変換しなければなりません。

変換された電力は、生活用電気として利用するために、屋内に取り込まれます。

接続箱

「接続箱」は、ソーラーパネルからひいた配線を1つにまとめて、パワーコンディショナーへ送る機器です。

接続箱には、「入力用直流開閉器」「出力用端子台」「逆流防止素子」「避雷素子」「開閉器又は遮断器」などの機能が装備されています。

例えば、「開閉器」では、ブレーカーのようにONとOFFを切り替えて電流を制御し、「避雷素子」は落雷から機器を守ります。

接続箱は重要な役割を果たしており、パワーコンディショナーと一体化されているものもあります。

設置場所によって屋内用・屋外用があり、屋外用は防水などのメンテナンスが必要です。

分電盤

「分電盤」は、住居内で電力を消費するために、取り込んだ電力を分散して配電する機器です。

発電量が家庭で消費する量を超えると、電力会社に送って買い取ってもらい、発電量が足りないときは、電力会社の電気を使うようになっています。

住宅用の「蓄電池」を設置することで、ソーラーパネルで発電した電力を蓄電し、さらに効率的に太陽光発電利用できます。

発電量確認モニター

発電量確認モニターは、太陽光発電で発電した電気量や、家電の電気使用量、売電量や買取価格、時間帯別電気料金、環境貢献度などが確認できます。

リビングなどにモニターを設置して、家族全員で住宅のエネルギーについて確認し、省エネへの関心を高めます。

また、データを家庭用のルーターで飛ばしてパソコンで見たり、外出先からスマホで発電状況を確認したりすることも可能です。

住宅用の太陽光発電を設置するメリット

太陽光発電を住宅に設置することで、今までになかった、新しい電気との暮らし方が始まります。

太陽光発電には、光熱費の削減、災害時の自家発電、余った電気の売電などの多くのメリットがあります。

光熱費の削減

太陽光発電のシステムを設置することで、自宅で発電した電気が使用できるため、光熱費が削減できます。

余った電気を蓄電すると、夜間や天候の悪い日でも、電力を購入しないで自家発電した電気を使うことができます。

設置に初期費用がかかりますが、長い目で見れば、光熱費の削減でメリットがあります。

また、太陽光パネルの屋根への設置で、屋根の表面温度を下げ、夏場の遮熱効果が期待できます。

いっぽう、冬場は熱が逃げにくくなる保温効果があるため、年間通して空調費の削減につながります。

さらに、有事の原油の値上がりが、電気代として家計にひびかないように、石油輸入への依存度を下げることができます。

災害時や停電時でも電気が使える

太陽光発電は、災害時や停電時でも電気が使えるという、緊急時に備えたリスク管理の面で注目されています。

東日本大震災などの広域にわたる震災や、大型台風による停電時でも電力が確保できるため、太陽光発電を導入する企業や店舗が増えています。

災害時のインフラ復旧には時間がかかりますが、太陽光発電では最低限の電力が確保でき、電気があれば店舗も営業が再開できます。

太陽光発電では、停電時でも日中の太陽が出ている時間帯は電気が使用でき、インターネットの接続や携帯電話の充電も可能です。

電子決済が日常的になってきた今日では、個人の家庭でも電気は生活に欠かせないものになっています。

売電による収益

太陽光発電の設置には、初期費用がかかりますが、余った電気を電力会社に買取ってもらう、「固定価格買取制度」があります。

「固定価格買取制度」とは、経産省の資源エネルギー庁が定めた制度で、住宅用太陽光発電で余った電力を、10年間一定の価格で買い取る制度です。

10kW未満の住宅用太陽光発電の場合は余剰電力を、10kW以上の事業用の場合は全量を、電力会社に買い取ってもらうことができます。

そのため、安定した長期投資として、太陽光発電のシステムを設置する人も増えてきています。

賃貸用不動産への投資の場合は空室リスクがありますが、太陽光発電の投資は、固定価格買取制度によって安定した売電収入が期待できます。

石油依存からの脱却と環境保全への貢献

太陽光は、環境汚染を引き起こさない「クリーン・エネルギー」で、石油や石炭のように「CO2の排出」や「資源枯渇」の問題がありません。

近年では、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に力を入れている企業に投資する「ESG投資」が世界で広がりを見せています。

地球温暖化による異常気象が深刻化する中、環境への意識が高まり、石油などの天然資源に依存しない、地球環境に優しいエネルギーが注目されています。

住宅用太陽光発電では、「発電量確認モニター」が設置されるため、家族の皆が消費電力や発電量を確認し、節電意識が高まります。

子供の頃から節電意識やエネルギーへの関心を持つことは、次の世代を担う人材を育てる上でも大切と考えられます。

住宅用の太陽光発電を設置するデメリット

太陽光発電を住宅に設置することで、節電や売電のメリットがありますが、デメリットもあることを事前に認識しておくことが大切です。

日射量は住宅の立地条件や地域の天候によって異なり、また、設置は信頼できる業者に依頼し、定期的にメンテナンスする必要があります。

立地条件による発電量の違い

太陽光発電では、日射量によって発電量が変わり、日射量は住宅の立地条件によっても異なってきます。

住宅専用地域の種類によっては、高層住宅も建設できる専用地域もあり、ビルの日陰になると十分な日射量の確保は難しくなります。

住宅を建てたときは十分な日射量が確保できても、近隣に高層マンションが建設されれば、日射量は激減してしまいます。

また、1年間を通して曇りや雨の多い地域では、日射時間が短く発電量が少なくなります。

パネルの設置費用と発電量は、一般的な事例に基づいて計算されているため、立地条件により発電量や利益率が異なってくることを認識しておきましょう。

天候による発電量の変動

太陽光発電は、天候や季節によっても左右され、曇りや雨の多い季節では日射時間が短くなり、毎月の発電量が安定しません。
日照時間の短い悪天候の続く季節では、発電量が下がって、安定して電力を供給できない日もあることを認識しておきましょう。

近年の異常気象では、今後天候の不順な日が続くことも予想され、全ての消費電力を、太陽光発電だけに依存することは難しいと考えられます。

また、余剰が出るまでの電力を生産できなければ、投資の面でも、売電による安定した収益が望めません。

地域の気候による発電量の違い

雪や雨の多い地域では、太陽光パネルの表面温度が下がり、発電効率が悪くなるほか、気温が高すぎる地域でも、発電量が減ることがあります。

太陽光パネルのメーカーが記載している発電効率は、一般的にパネルの表面温度が約25℃の、発電に最適な温度で期待できる値です。

真夏の炎天下で、パネルに熱がこもりすぎてロスが発生すると、日照時間に基づいた発電量に至りません。

雨や雪が少ない地域だからといって、必ずしも発電効率が高くなるものではないため、適切なパネルの設置の仕方が重要です。

パネル設置の向きと角度

パネルの方位と傾斜角度でも、発電効率が異なり、年間の発電量や売電収入にも差が出てきます。

発電に最適なパネルの設置方角は真南といわれており、北向きに設置する場合は、発電量が3割以上も少なくなるといわれています。

土地の形状や屋根の形で、パネルを真南に設置するのが難しい場合は、メーカー標準の日射量が確保できないことも認識しておきましょう。

また、最も発電効率の良い設置角度は、30度と言われていますが、地域の緯度や気候によっても最適な角度は異なってきます。

積雪の多い地域では雪対策を優先し、雪が滑り落ちやすいよう角度をつけるなど、設置に詳しい専門家の判断が必要です。

また、台風の多い日本では、強風や突風を受けやすいエリアでは、架台への負荷が強くなる無理な設置角度はひかえましょう。

設置費用とメンテナンス費

太陽光発電の設置では、ソーラーパネルや周辺機器の価格は年々下がってきていますが、導入するにはかなりの初期費用がかかります。

パネルの品質や架台の種類、屋根の面積やパネル枚数によって異なりますが、およそ170~200万円が相場といわれています。

太陽光発電はメンテナンスが不要と思われがちですが、実際は、表面の清掃やパワーコンディショナなどの周辺機器の交換が必要です。

ソーラーパネルや周辺機器の不良は、保証期間内であれば取り替えてもらえますが、台風の被害によるパネルや機器の破損では修理費がかかります。

パワーコンディショナの耐用年数は10年ほどで、現時点での費用相場は20万円程度といわれています。

太陽光発電の今後の課題

太陽光発電は、近年かなり普及してきましたが、それでもまだ、新しいシステムと言えます。

太陽光発電の正しい知識を持ち、メリットとデメリットを理解したうえで、信頼できる業者に設置を依頼することが大切です。

悪質業者に注意

自然災害による停電などのリスクが高まり、生活の電力への依存度が深まるにつれて、太陽光発電は今後さらに注目されていくと見られます。

そのため、投資としての太陽光発電を勧める業者も出てきており、「太陽光発電は儲かる」「メンテナンスフリーだ」などと勧誘してくることがあります。

実際は、立地条件や地域の気候、屋根の形状による設置方位や角度、設置枚数やパネルの品質により、発電量にはかなりの違いがあります。

積雪の多い地域や高温多湿な場所では、パネルの設置角度や施工技術が重要で、設置方法が悪ければシステムの寿命が短くなります。

業者によるずさんな設置で、突風で飛ばされて近隣地域に被害を出せば、重大な補償問題に発展しかねません。

保証期間と維持費

太陽光発電を販売している会社の多くは、10年間の保証期間を設けていますが、10年目以降のメンテナンスは保証期間の延長費が発生します。

「固定価格買取制度」では、電気の買取に関して、10kW未満は10年、10kW以上は20年間と決められています。

近年、10年の買取期間満了を迎えるケースが増え、2009年に設置された推定50万件の設備が満了を迎える、「2019年問題」が話題になっています。

固定価格買取が終了した後の余剰電力をどうするか、引き続き電力会社に売電できるのか、自家消費型に切り替えるのか、などを決めなければなりません。

新しく電力会社ができることもあり、今後の電力会社の動向や政府の方針が気になるところです。

売電価格の変動

10kW未満の住宅用太陽光発電設備では、2009年の売電価格は1kWhあたり48円でしたが、近年、売電価格が毎年下がってきています。

固定価格買取制度が開始された2012年では42円でしたが、年々安くなり、2019年には24円まで下がっています。

買電価格は、電力会社と行政の影響を大きく受けるため、今後どのような展開になるのか先が読めない面もあります。

しかし、ローンや補助金などの制度があるため、正しい情報を常に集めて、太陽光発電の導入を検討してゆきましょう。

まとめ

生活の家電化やネット社会が進み、また、日常の買い物も電子決済が増え、電気は私たちの生活とって切っても切れないものになりました。
災害時の停電では日常生活が麻痺し、携帯も使えず、マンションの水道水も出なくなり、車庫の扉も開かないといった事態になってしまいます。

太陽光発電にはまだまだ多くの課題がありますが、正しく太陽光発電のシステムを住宅に導入することで、多くのメリットを享受することができます。

ソーラーパネルの性能がアップし、周辺機器の価格も下がり、ソーラーパネルの設置に詳しい業者も増えてきました。

今後の政府のサポート体制や、電力会社の買取制度など、常に新しい情報を得ながら、太陽光発電の賢い選択をすることをお勧めします。