家を建てるのは、人生で一度か二度の大仕事で「理想の家を建てたいが失敗はしたくない」と思うのは当然のことですね。
中でもリビングを「吹き抜け」にしようかどうか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
吹き抜けで天井を高くすると、まるでブティックやカフェのような、おしゃれで開放感のある空間を演出することができます。しかし、光熱費がかかり、間取りの制限を受けるなどと聞いて、吹き抜けにするのをためらっている人も多いと思います。
この記事では、自宅の設計に「吹き抜け」を取り入れた場合、どのような制限を受け、生活にどんな影響が出るのかについて紹介します。
「吹き抜け」の家のデメリットとメリットを知り、おしゃれで快適な、理想の吹き抜けの家を建てるポイントをおさえましょう。
家の吹き抜けとは?住宅の構造を理解しよう
家の吹き抜けと言えば、天井が高い部屋というイメージですが、実際に住宅に取り入れる場合、どのような吹き抜けのタイプがあるのでしょうか。
まず、吹き抜け住宅の基本的な構造について理解しておきましょう。
吹き抜けとは
吹き抜けとは、天井を取り除いて、1階と2階の層を無くして、天井の高い居室空間にすることです。
吹き抜けを作って、上層と下層の階を連続させることで、天井からくる圧迫感を軽減し、生活空間に広がりを持たせます。
住宅構造に「吹き抜け」を取り入れることで、より多くの自然の光を取り入れて部屋を明るくし、風通しをよくして爽やかな住居環境をつくります。
吹き抜けのタイプには、「周囲が壁で囲まれた吹き抜け」と、「階段で上階のホールに続くオープンになった吹き抜け」があります。
周囲が壁で囲まれた吹き抜け
「周囲が壁で囲まれた吹き抜け」は、天井の高さの抜け間はありますが、上の階の部屋が壁ですっぽりと囲まれているため、開放感が少なくなります。
「吹き抜け」では、天井の開口部の広さで、開放感や明るさが左右されるため、吹き抜け部分の奥行きと幅を十分にとる必要があります。
吹き抜けの奥行き(2階部分の居室の壁から、吹き抜け部分の外壁までの距離)を、広くすればするほど、吹き抜け効果の開放感がでます。逆に、吹き抜けの奥行きが狭いと、窓からの採光が居室側の壁でさえぎられて、部屋の下にまで届かなくなり、せっかくの吹き抜け効果が減ってしまいます。
しかし、「吹き抜け」の面積を広くすればするほど、2階の居住面積が減ってしまいます。そのため、「吹き抜け」の効果を出すには、吹き抜けの奥行きと2階住居部分の床面積のバランスをうまく取ることがポイントです。
階段で上階のホールに続くオープンになった吹き抜け
吹き抜けは、2階に続くオープンな階段をつけることで、開放感や視覚効果を高めることができます。階段を昇ったところにホールを作り、居室の壁を後退させることで、下から見上げた時の圧迫感をさらにへらすことができます。
階段の手すりやホール部分を、スチール素材などの抜け間のあるフェンスにすると、より圧迫感のない視覚効果を作ることができます。
開放感を出すには、吹き抜け部分をシンプルな形状にすることがポイントで、凹凸が多いと動線がさえぎられ、せっかくの抜け感が軽減します。
吹き抜け効果を最大限に活かすには、より広い開口部で、シンプルな壁構造にして、なるべく視界をさえぎるものを置かないことがポイントです。
吹き抜けのデメリット
「吹き抜け」を作ることで、オシャレで開放感のある明るい部屋になりますが、デメリットもあります。
吹き抜け部分の天井を取り除くことで、実際にどのようなデメリットが生じるのかについて、まず見てみましょう。
吹き抜けがあると冷暖房の光熱費がかかる
吹き抜けのあると、断熱性や気密性の悪い家では、夏場は暑く、冬場は冷え込みやすくなります。
また、吹き抜けを作ると天井が高くなったぶん、温度調節しなければならない室内の空気の容積が増えるため、冷暖房の費用が高くなります。
部屋を暖めるのに時間がかかり、暖かい空気は上にいくので、冬場はさらに光熱費がかかります。空調機の効果を高めるには、サーキュレーターや扇風機で空気を循環さすか、シーリングファンを天井につけるなどの対策が必要です。
また、設計時に屋根や外壁に断熱材使用したり、床暖房で足元から温めたりするなどの設備投資が必須です。
吹き抜けの効果を出すには窓の設置が必要
吹き抜けの開放感を演出するには、採光を存分に取り入れるために、設計時に窓などの開口部を広くとることになります。しかし、大きな窓を設置すると、温室のように太陽熱も取り込んでしまったり、日没時には西陽でまぶしくなったりします。
吹き抜けの窓には軒(のき)をつけて、直射日光をさえぎる他、スクリーンやブラインドなどの設置が必要です。
近年は、異常気象で強風や豪雨が多いため、窓やサッシからの雨漏りしないようにメンテナンスも重要です。吹き抜け窓のブラインドは、電動式のものが多くありますが、災害時の停電では使用できなくなることも考慮しておきましょう。
高所の窓ガラスやサッシの掃除が大変になる
吹き抜けで設置した窓は、蜘蛛の巣が張ったり、泥や木の葉が付着したりすると、汚れが目立ちやすいといえます。
窓ガラスは外気との温度差が大きくなるため、結露ができやすく、結露にカビが生えたりします。そのため、結露に強いガラスを使ったり、強化ガラス、遮熱・遮熱ガラスなど、ガラスの品質にも配慮が必要です。
高所の窓ガラスの掃除には、脚立や梯子が必要ですが、二階建て住宅の屋根まで届く梯子を使った作業は非常に危険です。業者が使うような足場も、ホームセンターで売っていますが、組み立て技術や収納スペースが必要です。
高所の照明機器や壁のメンテナンスに手間と費用がかかる
照明器具の電球の交換や、シーリングファンの掃除も、高所の作業になるため危険を伴います。照明器具の電球交換などは、家を建てた施工業者に依頼する方法もあります。
建設時に、電気交換などのアフターケアに対応してくれるか、費用はどのくらいかかるかなどを聞いておくと良いでしょう。
結露による壁紙のはがれや、雨染みで壁紙の一部を張り替えるなどの場合、色あせによる違和感をなくすために、壁紙全面の張り替えも必要となります。
電気、ファン、壁紙の張り替えなど、危険を伴う高所の作業では、業者に頼むことになり、通常より多くの維持・管理費が発生します。
保守点検のために、キャットウォークのような狭い通路を、吹き抜けの高窓の付近に設置することも有効ですが、見栄えが悪くなることは避けられません。
吹き抜けで音や臭いが2階に届きやすい
吹き抜けがあると、1階のダイニングキッチンやリビングの音や臭いが、2階に伝わりやすくなります。
例えば、「1階リビングのテレビの音や話し声が、2階の寝室に響いてうるさくて眠れない」などがあります。リビングでの話し声や掃除・片付けの音が響くため、音に敏感な人の寝室は、吹き抜けから離れた箇所に設けるなどの工夫が必要です。
また、オープンでダイニングキッチンやリビングが続く間取りでは、料理の臭いが2階まで上がりやすいため、強力な換気扇の設置が必要です。上階のホールからリビングが見渡せるため、子供の様子を見るのには良い反面、プライベートな時間や空間が確保しにくいと言えます。
2世帯住宅など、生活の時間帯や好みが違う家族が同じ屋根の下に住む場合は、音や臭いはストレスの原因となりやすいことを理解しましょう。
居室床面積が狭くなり活用スペースが制限される
吹き抜けのために、本来は部屋に利用できるスペースが確保できないため、上階層の床面積が狭くなり、部屋数の間取りも制限を受けます。
子供部屋や寝室を多くとりたい人、収納スペースを広く確保したい人には、吹き抜けの家は向いていないと言えます。また、吹き抜けは床面積が狭くなるにもかかわらず、坪単価が高くなる傾向があります。
立地条件で北側に吹き抜けを設ける場合は、北側は特に外気との温度差で結露ができやすく、カビが発生しやすくなります。
オープンな構造でもうけた2階ホールは、洗濯物を干したりするのにも使えますが、生活感が出てリビングからの眺めがそこなわれることもあります。
吹き抜けがある家のメリット
吹き抜けの家には、紹介した内容のデメリットがありますが、生涯の理想の家を建てることでは、妥協しない精神が大切です。
近年の住宅は気密性がよく、魔法瓶のようになっていて、一度空調機を稼働すれば、冷暖房の効果が長時間維持できます。吹き抜けの家でも、耐熱ガラス、二重ガラス、床暖房、性能の良い換気扇、防音素材、遮熱塗料など、優れた商品が開発されており、設計段階で十分対処できます。
それでは、吹き抜けで得られるメリットについて具体的にみてみましょう。
吹き抜けで採光を取り入れ明るい部屋になる
吹き抜けを作ることで、高い位置から窓をつけて、太陽の光を効果的に部屋の中に取り入れることができます。
子育てで家にいる時間が長い人、テレワークで家で仕事をしている人にとって、快適な生活環境を作るのに、採光は第一の優先項目です。自然の光を家の中に取り込むことで、部屋全体を明るい雰囲気して、薄暗い部屋で過ごすよりも気分を明るくすることにつながります。
都心部では隣家や塀との距離が近く、窓から光を取り入れにくく、日中でも電気をつけて過ごしている人も多いのではないでしょうか。2階部分の高い位置に窓をつけることで、外から覗き見されることなくプライバシーを確保しながらも、自然の太陽光線を効果的に部屋の中に取り込めます。
夜には星空を楽しむこともでき、都心で暮らしながらもリゾート気分を味わう、ゆとりのある暮らしができます。
天井が高く圧迫感のない開放感のある部屋になる
吹き抜けで天井が高くなると、視線が上に抜けるため、家の中がより広く感じられ、開放感のある部屋になります。
また、窓を設けることで動線を外に向けて、借景効果で室内にいながら外の景色を楽しみ、閉塞感をなくすことができます。
都市部の狭小地では、容積率が緩和されるため、吹き抜けで床面積を犠牲にしても、開放感のメリットを生かすのも一つの選択肢です。
吹き抜けで風通しのよい部屋が作れる
暖かい空気は上に登る性質を利用して、吹き抜け構造で、室内の空気が自然循環する風通しの良い家を作ることができます。
天井にシーリングファンを設置し、空気を撹拌して、家の中の空気を循環させるのも効果的です。
低い窓から取り入れた空気を、高い窓へ流して自然換気を促すことで、真夏日の増える近年、夏場の光熱費を削減することができます。
上下階がつながり遊び心のある躍動的な生活空間が作れる
吹き抜け部分に、2階に続くオープンな階段を作り、開放感のある躍動的な空間を演出することができます。特に、階段を登ったホールは、太陽光を取り入れた居心地の良い空間で、子供の遊び場や読書などに活用でき、ゆとり空間が生まれます。
吹き抜けのリビングは、明るく居心地が良いため、家族が自然と集まり、連続した空間で家族の親密性を深めることができます。
上下階がつながり、声が届きやすいため、食事の声かけや終身時間など、2階にいる家族とのコミュニケーションがより良くなります。
子供が小さい間は、2階からもリビングの子供の様子に気を配りながら用事ができ、ちょっとした子供の変化にも敏感になれます。
「子育てでできる限り親子のコミュニケーションを取りたい」と望む人にとっては、吹き抜けのある生活空間はおすすめと言えます。
デザイン性が高くモダンな家が作れる
吹き抜けをつくることにより、住居のデザイン性が高まり、インテリアを初め、普通の家よりもモダンな空間を演出することができます。ホテルやおしゃれな商業施設のように、空間デザインを生かした部屋を自宅とし、日常生活に取り入れることができる贅沢さがあります。
エントランスに吹き抜けを作る場合は、外気の影響を取り込みやすくなるため、床暖房をつけるなどの工夫が必要です。
吹き抜けの空間は、南側のリビングに作られることが多く、高台などの眺望を生かした間取りがおすすめです。
今後、在宅で働く機会も増えてくるため、暮らしの快適さを追求した理想の住まいを考える人にとって、吹き抜けのある家は大きな魅力です。
まとめ
コロナ感染のパンデミックで外出禁止令がでて、STAY HOMEが合言葉となり、テレワークやリモート学習が推進されるようになりました。家で生活することを余儀なくされる方も増えているかもしれません。
家は仕事や学校から帰ってきて寝るだけの場所ではなく、毎日を快適に過ごす空間と考えた時、住まいに対する新しい発想が生まれてきます。
吹き抜けのある家は、その中の一つの選択肢と言えるでしょう。
メリットとデメリットを正しく理解し、理想の家を建てることの参考にしていただければ幸いです。